内容説明
一流シェフを夢見て修行する彼女を、ある日、交通事故が襲った。そして、傷が癒えはじめて気づいたことは…なんにもにおわない!モリーの世界からは「におい」が消えていたのだ。においのない世界の住人になって、モリーは、自分の人生がいかに嗅覚によって彩られてきたか、少しずつ気づいていく。食事や異性との関係、記憶とのつながり、いろいろな場面に出現する「におい」という感覚がもたらす不思議をひもとく物語。
目次
1 鴨の脂とアップルパイ―わたし、厨房に入る
2 サワーミルクと紅葉―わたし、一から出直す
3 ローズマリーとマドレーヌ―わたし、折り合いをつける
4 焼きたてベーグルと彼氏のシャツ―わたし、試行錯誤する
5 シナモンガムと硫黄―わたし、料理を始める
6 ピンクレモネードとウイスキー―わたしたち、集まる
7 キーライムとラベンダー―わたし、味わう
8 オポポナックスとヒマラヤ杉―わたし、自分の感覚に立ち返る
著者等紹介
バーンバウム,モリー[バーンバウム,モリー] [Birnbaum,Molly]
1982年、米ボストン生まれ。コロンビア大学ジャーナリズム大学院卒業。「ニューヨークタイムズ」「アートニュース」等に執筆(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
フユコ
57
嗅覚がなくなってしまう人の話。 小説だと思って読んでいたのでびっくりした。 こんなにたくさん嗅覚を感じる事が出来なくなってしまった人がいるなんて知らなかったし、 なくなると食事が本当に味気なくなる悲しさが居た堪れなかった 。 何度も悲しくて嬉しくて涙目になった。2018/12/03
ゆあん
18
図書館にて。臭覚の研究が遅れているのは知っていたけれどこんなに影響を及ぼすものであれば早く研究が進めばいいのにと願う。臭紋があったり自分に1番遠い遺伝子を選んだり、妊娠中は逆になるなど色々意味があるんだ。味がわかってもにおいがあって初めて風味がつく。咀嚼している時に喉の奥から上がる香りが口中香といって風味を感じるなど味に影響するものなのだ。それに幻臭という症状は知っていたけれど本当に辛いだろう。嗅ぐと感じるはフランス語で同じsentirで臭いの分別とは積み重ねの記憶らしい。もっと読み込みたい本。2014/11/12
凛
14
科学は身体において19,20世紀は物質の世紀だった思う。健康である為に必要な食べ物、分子構造が何なのか暴いてきたという意味で。21世紀からは情報において科学が発展して欲しい。可視化できないため一見分かりづらく、無くても最低限は生きていけるけど無ければストレスが溜まるもの。音や味や匂い。何が必要なのかただただ知りたい。その為に無い状態はどういうものなのか、と考えた時嗅覚が無い環境はあまり想像できないな、と。シェフを目指す主人公が事故で嗅覚を失ってから様々な情報を仕入れていく行動力が凄かった。良訳。2015/07/02
くさてる
14
とても面白かった。事故で嗅覚を失った料理人志望の女性が辿る、嗅覚を取り戻すのと同時に人生を切り開いていく物語。ノンフィクションです。細かく語られる料理や食材の描写が楽しく、匂いを失うことがもたらす生活への影響にはじまり、事故からの回復、そこを乗り越えること、再び生きて恋をすることということまでたどり着く物語性に惹きつけられました。映画になってもおかしくないラブストーリーでもあるけれど、匂いは映像で表現できないから難しいかな?オリバー・サックス博士もゲスト出演しています。2014/01/29
トーマ
10
図書館本。事故で嗅覚を失った人が、においを取り戻すまでの話。文体は読みやすいけれど、過去と現在が頻繁に入れ替わったり、においに関する脳や記憶の話が割り込み、話の流れや構成にはいらいらした。けれど人間にとってのにおいの重要性や、初めて知る感覚を教えてくれる良い本だった。闘病日記というよりは、においについての追求日記に近く、においについての専門書を読んでいる感覚に近い。また彼女がシェフ志望だったこともあり、料理が好きな人が読んでも、何か得られるものがあると思った。読書中、鼻を自然とクンクンさせる本でした。2017/04/18