ちょっと気になる政策思想―社会保障と関わる経済学の系譜

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  • サイズ A5判/ページ数 357p/高さ 21cm
  • 商品コード 9784326701063
  • NDC分類 364
  • Cコード C3036

出版社内容情報

所得再分配政策を経済学説の系譜から考える。社会保障というシステムの根本からわかりやすく教え、学ぶための入門書、第三弾。

はじめに

拙著文献表



【応用編 ?】



第1章 社会保障政策の政治経済学──アダム・スミスから,いわゆる“こども保険”まで

 概要の紹介

 働くことの意味とサービス経済の意味

 人口減少社会と経済政策の目標

 手にした学問が異なれば答えが変わる──上げ潮派とかトリクルダウンとかの話

 経済学と政策思想

 最後に,ミュルダールと,いわゆるこども保険について──ミュルダール夫妻の『人口問題の危機』



【理論編】



第2章 社会保障と関わる経済学の系譜序説──サミュエルソンの経済学系統図と彼のケインズ理解をめぐって

 はじめに

 サミュエルソンが描く経済学の系統図とその問題点

 サミュエルソンの自信とノーベル経済学賞

 社会保障と関わる経済学の系譜

 経済学と政策との関わりを示す一例



第3章 社会保障と関わる経済学の系譜

 はじめに

 マンデヴィルとスミス

 スミスとマルサス

 ママリー,ホブソンとケインズ

 ケインズのゲゼル評

 ゾンバルトの『恋愛と自由と資本主義』

 経済政策思想の流れ

 右側の経済学と左側の経済学の相違

 右側の経済学とモンペルラン・ソサイアティ

 左側の経済学における不確実性とミンスキー,そして過少消費論

 資本主義の成熟と社会保障



【応用編 ?】



第4章 合成の誤謬の経済学と福祉国家

 合成の誤謬と自由放任の終焉

 合成の誤謬に基づく政策に抗う経済界

 経済界のプロパガンダと規制緩和圧力

 成長政策と戦略的貿易論



第5章 公的年金保険の政治経済学

 年金界とのかかわりのきっかけ

 右側の経済学と左側の経済学

 ケインズの嫡子たち

 経済政策思想の流れ

 セイの法則かケインズの合成の誤謬か

 手にした学問が異なれば答えが変わる

 リスクと不確実性

 経済学と政治,政策,そして思想とのつながり

 積極的賦課方式論

 公的年金が実質価値を保障しようとしていることの

 説明の難しさ

 市場を利用することと引き換えに喪っていったもの

 素材的・物的な視点からみた積立方式と賦課方式の類似性

 積立方式信奉者たちの論

 本日のメッセージ



第6章 研究と政策の間にある長い距離──QALY概念の経済学説史における位置

 HTAとのかかわり

 実証分析と規範分析

 規範経済学の学説史──基数的効用から序数的効用へ

 厚生経済学から新厚生経済学へ

 アローの不可能性定理と分配問題

 経済学と価値判断

 政策論と価値判断

 QALYに内在する基数的効用

 HTAの政策立案への活用可能性



第7章 パラダイム・シフトほど大層な話ではないが切り替えたほうが望ましい観点

 はじめに

 ダーウィン,マックス・プランクとパラダイム・シフト

 クーンにパラダイム・シフトを着想させたもの

 社会経済政策を考える上でのスタート地点での観点について



第8章 医療と介護,民主主義,経済学

 投票者の合理的無知

 世論7割の壁

 予算編成の現状の共有

 手にした学問が異なれば答えが変わる



おわりに



【知識補給】

思想と酩酊体質

エコノ君の性格

がんばれ,ベーシック・インカム!──社会保障の正確な理解もよろしく

「市場」に挑む「社会」の勝算は?

合成の誤謬考──企業の利潤極大化と社会の付加価値極大化は大いに異なる

アダム・スミスとリカードの距離──縁付きエッジワース・ボックス

マーシャルを読んだシドニー・ウェッブのラブレター……誰に?

制度学派とリベラリズム,そしてネオ・リベラリズム

税収の推移と見せかけの相関および国のガバナンス問題

スキデルスキーのケインズ論

大登山家ママリーとマッターホルン,

そしてスイスアルプスとマーシャル

独占的競争という戦い方……

Positiveの訳は実証で良いの?

福澤諭吉とミュルダール

クーンが,パラダイム・シフトを捨てた理由

ポパー,ハイエク,ライオネル・ロビンズの親和性

市場は分配が苦手なのに繰り返し出てくるトリクルダウン





図表一覧

事項索引

人名索引

権丈 善一[ケンジョウ ヨシカズ]
著・文・その他

内容説明

「社会保障というシステム」の根本からわかりやすく学び、教えるための入門書第3弾。所得をどのように分配すれば経済の活力は高まるのか?政策がどのような前提から導き出されているものか自覚のないまま行われる社会保障論議の愚を説き、前提・思想を自覚した政策形成を提言。所得再分配政策の在り方を経済学説の系譜から考える。

目次

応用編1(社会保障政策の政治経済学―アダム・スミスから、いわゆる“こども保険”まで)
理論編(社会保障と関わる経済学の系譜序説―サミュエルソンの経済学系統図と彼のケインズ理解をめぐって;社会保障と関わる経済学の系譜)
応用編2(合成の誤謬の経済学と福祉国家;公的年金保険の政治経済学;研究と政策の間にある長い距離―QALY概念の経済学説史における位置;パラダイム・シフトほど大層な話ではないが切り替えたほうが望ましい観点;医療と介護、民主主義、経済学)

著者等紹介

権丈善一[ケンジョウヨシカズ]
慶應義塾大学商学部教授。博士(商学)。1962年福岡県生まれ。1985年慶応義塾大学商学部卒業。1990年同大学院商学研究科博士課程修了。嘉悦女子短期大学専任講師、慶應義塾大学商学部助手、同助教授を経て、2002年より現職。この間、2005年ケンブリッジ大学ダウニグカレッジ訪問研究員、1996年~1998年ケンブリッジ大学経済学部訪問研究員。公務では、社会保障審議会、社会保障国民会議、社会保障制度改革国民会議、社会保障制度改革推進会議の委員や社会保障の教育推進に関する検討会の座長など。主要業績に、『年金改革と積極的社会保障政策―再分配政策の政治経済学II(第2版)』(2009年(初版2004年、労働関係図書優秀賞))、『再分配政策の政治経済学I―日本の社会保障と医療(第2版)』(2005年(初版2001年、義塾賞))(以上、慶應義塾大学出版会)などがある。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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Francis

16
国の社会保障制度に審議会などの場で大きく関わっている経済学者権丈善一先生が自らが奉ずるケインズ派経済学、権丈先生言うところの左の経済学について学説史、社会保障との関わりを通して説明している。権丈先生らしいユーモアたっぷりの分かりやすい説明。私もケインズ派経済学のファンなのだけれども、権丈先生は本当によく知っていらっしゃる。このような先生が積立方式などの年金にまつわる過去の謬説を全部木っ端微塵に粉砕してくれて本当にありがたい。権丈先生に今後も期待。2019/01/10

hurosinki

6
アダム・スミス以来の経済学を供給が経済規模を規定するとみなす「右側の経済学」、需要が規定するとみなす「左側の経済学」に分ける。「供給はそれ自らの需要を作る」というセイの法則を認めないのがマルサスやケインズの「左側の経済学」で、供給過剰を想定し、政策的に需要を作り出すことを肯定する。 著者の権丈氏や小野善康氏も、成熟した先進国経済は財サービスの消費が飽和し、過小消費(供給過剰)の状態にあるとみている(p157)。2021/09/10

脳疣沼

6
ちょっと繰り返しが多いが、それでも面白く読めた。このシリーズは3冊とも読んだことになるが、どれも目から鱗。しかしどうした形で具体的に思想が売り込まれていくのか、ちょっとイメージができない。右側の政策思想はバックに経済界がいて情報を操作している、というのは分かりやすいけど、自分のことを考えると、どうしてこうも自由放任の経済思想に惹かれるのか不思議である。人間の性が右側を求めてしまうのかね。2019/01/23

tacacuro

3
アダム・スミス以来の、250年にわたる経済学・政策思想の系譜をざっくりと解説。本当にわかりやすい。前提は「合成の誤謬」か「神の見えざる手」か、将来は「不確実性」か予測可能な「リスク」か。どう置くかで「有効需要論」か「セイの法則」にわかれていく。必死に勉強したIS−LM分析が、ヒックス自身によって否定されていたとは、恥ずかしながら初めて知った。経済学をますます勉強したくなる本。2020/05/15

Anywhere

2
供給が経済規模を決める「右側の経済学」、需要か経済規模を決める「左側の経済学」の変遷と、これらが社会保障にどのように影響を与えてきたか?という話。手にした経済学で経済に対する処方箋が変わる。権丈先生の「ちょっと気になる社会保障」、「ちょっと気になる医療と介護」に比べ、かなり難易度が高い印象…2021/07/05

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