出版社内容情報
なぜ、こんなにも息苦しいのか──ケアをめぐる「常識」が作り出す困難と、日常生活に織り込まれた見えないジェンダー不均衡に迫る。
女性はケアに長けている? タスクさえ平等に分担できれば問題ない? 男性の「ケアできない」はなぜ説得力を持つ? ケアにまつわる「常識」が作り出す困難とケア責任を個人に負わせる社会構造を問い、「しんどさ」の正体を描き出す。親しみやすい文章でこれまで言語化されなかった育児や介護をめぐる困難の核心に迫る、画期的一書。
【目次】
プロローグ
名もなきケア責任[山根純佳]
Ⅰ 名もなきケア責任 ケア研究が見落としてきたもの
第1章 見えないケア責任を語る言葉を紡ぐために[平山 亮]
1 「名もなき家事」──語られ始めたもうひとつの家庭内労働
2 Sentient activity──ケアを成り立たせる感知と思考
3 「名もなきケア責任」をめぐるジェンダー不平等を「見える化」するために
第2章 母親規範とケア責任──保育の利用条件から考える[山根純佳]
1 「三歳児神話」とケア責任
2 「母親ならできる」規範と資源配分
第3章 「リスク社会」とケア責任──原発事故による「避難」から考える[山根純佳]
1 リスク管理という「思案」
2 リスクの家族化と不確実性
第4章 SAを行うには何が必要か──個人のスキルから、資源の社会的配分へ[平山 亮]
1 SA概念をどのように拡げたのか、なぜ拡げたのか
2 女性はSAするスキルに長けている?
3 時間という資源の配分
Ⅱ ケア責任を分け持つこと 専門職と家族の協働
第5章 SAの「協働」の可能性──専門職と家族のSA[井口高志・齋藤曉子・野辺陽子・藤原里佐]
1 認知症ケアのなかに見るSA[井口高志]
2 なにが家族に残されるのか──家族介護者とケアワーカーの協働の事例から[齋藤曉子]
3 養子縁組とSA[野辺陽子]
4 障害者ケアの家族依存──育児と介護の連続性に見る母親規範[藤原里佐]
第6章 ケア概念再考── SAのスコープから見えるもの[山根純佳]
1 ニーズの「手がかり」
2 家族とケアワーカーの協働
3 ふたつの思案──個別性と一般化された知
4 家族=ケアラーを超えて
第7章 〈思案・調整〉の分有と、分有のための〈思案・調整〉[平山 亮]
1 「一般化された知」に触れることの、ケアラーにとっての意味
2 「一般化された知」と科学的な情報は、何が違うのか
3 判断の結果を負うというケア責任、それをいかに分け持つか
4 女性限定のケア責任の分有で終わらないために
Ⅲ ケア責任とジェンダー
第8章 〈男性性〉とケア責任[平山 亮]
1 〈男性性〉とはなにか
2 「男性=ケアしない・できない」はどのように正当化されるのか
3 「標準」を切り崩す
第9章 ケアを男性と分有するということ[山根純佳]
1 なぜ男性と分有しなければならないのか
2 ケアする脆弱性に向き合うことと「つながり」
エピローグ
ケアを語り直す[山根純佳]
「わからない」から始まる「ケア責任とジェンダー」論[平山 亮]
【著 者】
山根純