内容説明
頬をバラ色に見せるドレス。顎ひもで自在に赤面できる帽子。ブラッシュ・ローズを飾ったパラソル。化粧でつくる乙女キャラ。人の外面から内面を読みとることができるとする観相学の流行をバックに、「赤面」が若い女性の純真を示す証となったヴィクトリア朝期。「理想の女性」像がつくられる過程を文学、絵画、服飾資料から描く。
目次
序章 ヴィクトリアンにとっての表情とは
第1章 赤面を科学する―チャールズ・ダーウィン『人、及び動物の表情について』(一八七二年)
第2章 理想的なレディーの赤面―ドリー・ヴァーデン
第3章 「明るい」顔色が語る
第4章 化粧の美徳を説く
第5章 ブラッシュ・ローズを纏う
終章 ヴィクトリアンの自己抑制と赤面
著者等紹介
坂井妙子[サカイタエコ]
1990年日本女子大学大学院文学研究科博士課程前期修了。1995年ロンドン大学大学院博士課程修了(M.Phil.取得)。2004年ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館特別研究員。現在、日本女子大学人間社会学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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rinakko
9
ヴィクトリア朝期のイギリス、人々は女性の赤面に魅惑されていた。それは精神美と表情美と容貌の美しさに関わり、魅力的な赤面とは完全な美と同義であった。故に、女性たちはこれを手に入れるために懸命な努力をする(涙ぐましい)。顔を赤らめる頬を染める→繊細な感受性や抑制、慎み深さといった女の美徳とやらの表徴…ということで。当時広まっていた観相学からの影響や、ブラッシュローズが若い女性のためのアクセサリーとして流行したこととの繋がりなどなど。面白く読んだ。2022/09/08
timeturner
7
面白いテーマだった。女性の武器になり、男性の障害となる赤面。そこから浮かび上がる当時の人種的・ジェンダー的差別が興味深い。観相学についてはもう少し読んでみたいな。2016/05/31
ののまる
5
赤面産業がもっと描かれていると思ったけど…2021/04/17
あくび虫
4
副題が「ヴィクトリア朝社会と化粧文化」となっていたので、完全にそれがメインで、「レディーの赤面」というのは装飾的な題だと思っていました。実際は見たまま「レディーの赤面」が主題です。――この時代の人たちが、赤面と精神やら人種やらを結び付けている様子には苦笑しました。なんとも強引。白人礼賛があまりに露骨。――化粧を忌避していたのは意外でした。肌の美しさを希求する様など、現代とまるで同じです。そういう観点から見ると、労働者階級と中産以上の女性で、容姿の優越がもはや必然だということには胸を突かれます。2016/08/17
カティサーク
2
現代は化粧・ファッションも多様化していて、理想の美・キャラクターも様々ですが、時代は違っても理想の美・キャラクター像を求めるのは変わらない。観相学を背景に、ヴィクトリア朝期の「理想の女性像」作られる過程を知れる、面白い本でした。2013/09/24