自己への物語論的接近―家族療法から社会学へ

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  • サイズ B6判/ページ数 258,/高さ 20cm
  • 商品コード 9784326652549
  • NDC分類 361
  • Cコード C3036

出版社内容情報

「私が私である」とはどういう事態なのだろうか。本書はこの問いに対して物語論の観点から、自分自身について語る物語(自己物語)を通して生み出される事態である、と答える。とりわけ、家族療法の分野で展開されてきた技法――すなわち自己物語を書き換えることによって自己のありかたを変えていく技法(物語療法)――を検討しながら、自己を社会関係に還元してきたこれまでの社会学的自己論の書き換えを試みる。また、その過程で、どの自己物語も実は語り残しを含み、それが自己変容のきっかけになることをあきらかにしている点が斬新である。

【目次】
第1章 「自己」への物語論的接近
 1 自己と物語
 2 「私」は自己物語を通して産み出される
 3 自己物語と語りえないもの
 4 これまでの社会学的自我論との対比

第2章 物語論の諸潮流
 1 物語としての歴史―歴史哲学の視点
 2 物語としての認識―心理学の視点
 3 物語としてのイデオロギー―イデオロギー批判の視点
 4 物語としての自己―臨床心理学の視点
 5 物語の形態と機能

第3章 家族療法とその物語論的展開
 1 家族療法の物語論的展開―システム論から物語論へ
 2 物語療法の理論と技法
 3 物語療法から社会学へ
 4 物語療法の限界

第4章 社会学的自己論は物語療法のに何を学ぶか
 1 社会学的自己論の二つの認識
 2 関係論的アプローチの困難
 3 物語療法の視点
 4 社会学的自己論を書き換える

第5章 構成主義から物語論へ
 1 物語論は構成主義である?
 2 構成主義とは何か
 3 構成主義のパラドクス
 4 物語論とパラドクス

第5章への補論 ガーゲンの自己物語論
 1 ソシアル・コンストラクショニズムの概観
 2 自己物語論
 3 自己物語論の拡張

あとがき
文献
索引

内容説明

「私」はいかにして生み出され、変容していくのか。物語療法をふまえながら、社会学的自己論の大胆な書き換えを図る。

目次

第1章 「自己」への物語論的接近
第2章 物語論の諸潮流
第3章 家族療法とその物語論的展開
第4章 社会学的自己論は物語療法に何を学ぶか
第5章 構成主義から物語論へ
第5章への補論 ガーゲンの自己物語論

著者等紹介

浅野智彦[アサノトモヒコ]
1964年仙台市に生まれる。1994年東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。現在、東京学芸大学教育学部教員
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

きいち

22
自己は、他者に対して自分を語る物語を通して形成される・・って、就活そのもの、キャリアデザインそのもの、すごい納得感。◇僕はずっと、成熟というのは固定した自我の確立ではなく、常に新たな体験のなかで自分をちゃんと更新し続けること、いわば完全変態ではなく不完全変態と考えてきたのだが、この本はそれをがっちり理論づけてくれる。何より素敵なのは、一つの物語の完結を阻む自己矛盾や隠蔽は決して「悪」ではなく、新たな自己物語へと導くポジティブな要因として考えられること。そう、どんな経験も努力も、決してムダにはならないのだ。2014/02/06

Ecriture

12
社会学の構成主義を通した物語論。構成主義と物語論の差の説明で、物語は他者に向けられてて他者を説得しようとするってあたりは社会学徒はどう読むのだろうか。社会学は構成主義においてパラドクスの脱パラドクス化に盲目なままでいられると言われたときの反論、あるいは実際は「語り得なさ」がどう処理されてるのか聞きたい。でも文学と比べた際に社会学という領野自体が「語り得なさ」の隠蔽を可能にしやすいというのはなるほどと思ってしまう。著者の物語の定義が割と偏ったものなのも気がかりな点。アリストテレスの時代じゃん。2011/02/11

hutosi

6
社会構成主義やら構築主義やら自己物語論やら分かりそうで分からないけどなんとなく分かる話のオンパレードの基、家族療法及びシステム論、そしてダブルバインド論は前提としてありつつその先の話にある気付きにくい物語の中の「語り得なさ」、物語るために隠蔽されるものがある、ということを自己物語を媒介に言葉で表した一冊。ところどころ、そして後書きでも著者のこの著作から滲み出ている生みの苦しみには同情する。それくらい難しいテーマを一冊の本にする、活字にする、言葉にするというのは苦しみも難しさも連れて行くんだなと感じた。2013/09/12

センケイ (線形)

3
よく耳目にする書だけあって、流石に深く広い。社会学&物語という組合せは一見遠そうだが、物語が社会的に構築されるという側面を読み、とても納得。また、確かにイメージ通り他の色々な分野とも繋がっているという点で、好奇心をひかれ続けた。自己物語というものに前からあったため、外とのつながりや、自分自身との関係とを含めてこのように包括的に読めるのは有難かった。すらすら読めるほどには易しくはないのだが、○○が分かったので次は△△を確認しよう、と確実に前に進める構成になっており、安心して快く読むことができた。2019/01/31

ゆうき

3
自己とは他者との関係によって作られれる。そして自分自身が選択した物語によって自分自身がどのような人間かを形成していく。その自分の客我(me)が選択しつくり出した物語をI(自我)が生きる。その作り出された自己の物語を書き換えることによって自己をつまり現在の自己である物語を書き換え過去の自己を書き換えることにより自己の物語は変容する。2013/12/18

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