出版社内容情報
相続,財産,奉公などの新しい史料の発掘を通して,ひたむきで気丈な女性像を再建し,なおまといつく〈身分〉と〈家〉の桎梏を具体的に考える。
江戸時代は、女性が社会の表舞台に出て活躍することがあまりのも少ない時代であった。この社会を理解するのに、これまではジェンダーをいっさい考慮しない幕藩体制論か、あるいはこれを補完する暗黒女性史論によって説明されてきたが、もはやそれだけでは不充分であろうというのが私の考えである。私の主張したいことは、女性のあるがままを史料に即して認識し、それを社会の中に正当に位置づけよ、ということに尽きる。 <序章>より
序章 女性のいる近世史
1 女性のいない近世史
2 なぜ、近世には女性がいないのか
3 「日本国は女性の地獄」
4 高群女性史は、近世をどう見ているか
5 1980年代に始まる女性史は何を明らかにしたのか
6 役負担できない性
7 近世は家父長制社会か
8 近世女性史の今
9 ジェンダーの近世史
10 本書の構成と課題
Ⅰ 農村の女性
第1章 農村における女性相続人―武州下丸子村の事例―
1 問題の所在
2 村の概況と相続の特徴
3 「中継的」な女性相続
4 家族に成年男子をともなう女性相続の実例
5 女性相続人の歴史的意味
第2章 近世後期における農村家族の形態―女性相続人を中心に―
1 はじめに
2 問題の所在―武蔵国下丸子村野事例―
3 東北農村における女性相続人―出羽国山家村の事例
4 畿内農村における女性相続人―河内国東出戸村の事例
5 自立的女性相続人の出現と消滅
補論 女性相続人 その後
1 批判に応える
2 馬込村の女性相続人
3 道々橋村の女性相続人
第3章 農村の女性労働―下女奉公と農作業―
1 はじめに
2 天保九年の奉公人
3 下女労働の概要
4 農作業と下女労働の役割
第4章 庶民女性の財産―豪農妻女の金融活動―
1 はじめに
2 中嶋春の金融活動
3 鈴木嘉代の経済活動
4 妻の<財布>
Ⅱ 女性の一生
第5章 農村女性の江戸城大奥奉公―生麦村関口千恵の場合―
1 はじめに
2 千恵の前半生
3 大奥奉公
4 村と江戸の往復
5 百姓の娘と武家社会
第6章 日記に見る女性像―生麦村関口愛の娘時代―
1 はじめに
2 幼年時代
3 行儀見習
4 お屋敷奉公
5 農村女性のライフコース
第7章 工藤綾子の生涯と思想
1 はじめに
2 綾子の前半生―出生から誕生まで
3 <家>をめぐる葛藤
4 女と男の差異について
5 綾子の晩年
Ⅲ 近世から近代へ
第8章 <国際結婚>ことはじめ―内外人婚姻規則の制定事情―
1 はじめに
2 幕閣の評議―慶応三年―
3 「内外人婚姻規則」の制定―明治六年
4 各国の反応
5 国籍と「分限」
あとがき
初出一覧
参考文献
索引
内容説明
新しい史料の発掘を通して、ひたむきで気丈な女性像を再建し、なおまといつく「身分」と「家」の桎梏を具体的に考える。
目次
序章 女性のいる近世史
1 農村の女性(農村における女性相続人;近世後期における農村家族の形態;女性相続人その後;農村の女性労働;庶民女性の財産)
2 女性の一生(農村女性の江戸城大奥奉公;日記に見る女性像;工藤綾子の生涯と思想)
3 近世から近代へ(「国際結婚」ことはじめ)
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きいち