出版社内容情報
ルーマンは全体社会を道徳的に評価するのではなく、現在の全体社会のなかでの道徳の機能を詳述しようとする。つまり、ルーマンの理論は規範的なものではない。ルーマンの見るところ、デュルケムは社会を評価するモラリストになってしまっている。社会学は「べき論」をなすのではなく、全体社会を記述する能力を高めるべきなのである。
内容説明
全体社会を、あるがままに記述することを是とするルーマンにとっての倫理学とは!?
目次
第1章 分業と道徳―デュルケムの理論
第2章 社会学的パースペクティブから見た規範
第3章 道徳の社会学
第4章 政治家の誠実さと、政治の高度な非道徳性
第5章 政治、民主制、道徳
第6章 経済倫理―それは倫理なのか
第7章 相互行為、組織、全体社会―システム理論の応用
第8章 われわれの社会においてなおも、放棄されえない規範は存在するか
第9章 パラダイム・ロスト―道徳の倫理(学)的反省について
第10章 リスクと危険についての了解
第11章 リスクの道徳と道徳のリスク
著者等紹介
ルーマン,ニクラス[ルーマン,ニクラス] [Luhmann,Niklas]
1927年生まれ。ビーレフェルト大学名誉教授。1968年から1993年までビーレフェルト大学社会学部教授を務めた。1998年没
馬場靖雄[ババヤスオ]
大東文化大学経済学部教授。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
6
道徳に関する著者の論考を集めた本書は、良い/劣るの2項コードによる機能システムとして道徳を扱い、このシステムに顕著な特徴を「超理論」(Supertheorie)と呼び、そのパラドキシカルな性質を前景化する。「道徳を問うことは道徳的か」という問いは、その前提である良い/劣るのコード自体も良い/劣るか、と問うことに等しい。著者はこのパラドクスに対峙しつつ、他のシステムにもその可能性を認め、近代以後の分化したシステム間の歴史・社会的な比較観察によって全体社会(Gesellschaft)を記述していく姿勢を示す。2024/08/02
GASHOW
3
信頼-社会的な複雑性の縮減メカニズム-が難しい本だと思ったら、こちらはそれを超えて難しい。道徳は信頼よりも更に難しいというシンプルな答えを得ました。2015/08/11