出版社内容情報
サイバー空間で増殖する情報の価値やリスクの帰属を考えるとき、人間の関与にはどのような意味があるのか。知的財産法の難問に挑む。
AIや仮想空間、それらの技術を応用したサイバネティック・アバターの構想は、フィジカルな制約から人間を「解放」しようとしている。だが、この解放は同時に、人間の関与を前提として設計された法制度に多くの課題を突きつける。本書では、知的財産をめぐる法的規律に焦点を当て、近未来を射程に収めた研究で最新テーマに鋭く迫る。
【目次】
はしがき
第1部 人間中心のクリエイション
第1章 発明における主体と客体──人工知能関連発明を素材として[吉田悦子]
Ⅰ はじめに
Ⅱ 特許権による保護の対象
Ⅲ 特許権の帰属
Ⅳ 人工知能(AI)関連発明との関係
Ⅴ おわりに
第2章 発明の実施における分散と集中──複数主体による実施及び仮想空間における問題を中心に[橘 雄介]
Ⅰ はじめに
Ⅱ 複数主体による実施
Ⅲ 仮想空間における問題
Ⅳ 属地主義(補論)
Ⅴ おわりに
第3章 AI生成物の著作物性と人間の関与[髙野慧太]
Ⅰ はじめに
Ⅱ AI生成物の著作物性において人間の関与が必要か
Ⅲ どのようなAI生成物に著作権を付与すべきか
Ⅳ 結びに代えて
第4章 著作権制限の正当化根拠としての受け手の利益[平澤卓人]
Ⅰ 問題の所在
Ⅱ 著作権制限の正当化の理論
Ⅲ 基本的情報への平等なアクセス・情報の多様化と日本の著作権制限規定
Ⅳ 個別の著作権制限規定等への示唆
Ⅴ 結びに代えて
第2部 人間中心のデザイン
第5章 用途・機能から切り離された形態の利用と法的規制──建築デザインの場合[末宗達行]
Ⅰ はじめに
Ⅱ 意匠法における「物品」性の意義
Ⅲ 建築デザインに対する意匠権と著作権による保護
Ⅳ 若干の検討
第6章 意匠の新規性判断におけるAI生成デザインの引例適格性[鈴木康平]
Ⅰ はじめに
Ⅱ 新規性判断における引例適格性
Ⅲ AI生成デザインの引例適格性
Ⅳ おわりに代えて:人間性中心デザイン
第7章 AIとデッドコピー規制[山本真祐子]
Ⅰ はじめに
Ⅱ AIを用いた新商品開発の「不正競争」(不正競争防止法2条1項3号)該当性
Ⅲ AI生成物についてのデッドコピー規制における請求主体
Ⅳ おわりに
第3部 人間中心のオートノミー
第8章 著作者人格権侵害要件の精緻化:序説──名誉権と同一性保持権との対話に向けて[鈴木敬史]
Ⅰ はじめに
Ⅱ 名誉権の侵害要件・制限法理
Ⅲ 著作者人格権の議論における名誉権法理の位置付け
Ⅳ おわりに
第9章 パーソナルデータの収集・利用から生じる利益の帰属をめぐる問題[橋本 伸]
Ⅰ はじめに
Ⅱ 従前のデータ主体の保護をめぐる議論──所有法の観点から
Ⅲ 近時のデータ主体の保護に関する議論──原状回復法の観点から
Ⅳ おわりに
第10章 パブリシティ権の正当化根拠とデジタル・レプリカの規制[斉藤邦史]
Ⅰ はじめに
Ⅱ 米国におけるパブリシティ権