出版社内容情報
文化は権利か? 2001年突如として制定された文化芸術振興基本法の詳細な検討から、権利としての文化権確立に向けた課題を提起。
1970年代に始まる日本の文化行政・文化政策、それを支える法制度の歴史と現状を振り返りつつ、基本法成立の経緯と課題、ヨーロッパにおける文化政策と法の状況を重層的に比較検討し、従来正面から法的権利として省みられてこなかった文化を議論の俎上にのせる。基本法成立過程その他詳細な資料を付す。
関連書:後藤和子『芸術文化の公共政策』(小社刊)、
中川幾郎『分権時代の自治体文化政策』(小社刊)ほか多数
第Ⅰ部 日本における文化政策と法
第1章 戦後我が国の文化政策の変遷と文化法研究の背景と領域
1 はじめに
2 1970年代以降が国の文化政策の変遷
3 特殊法としての文化法の範囲と「特殊法原理及び特殊原理」
4 文化法の研究領域
第2章 特殊権としての文化権の特質
──文化権の確立に向けて──
1 はじめに
2 公法の対象としての文化
3 文化に関する権利概念の生成
4 国際的動向
5 おわりに
第3章 我が国における文化法の現状
1 はじめに
2 現行法における芸術文化の定義と文化政策
3 自治体における文化振興条例
4 「公の施設」と公立文化施設設置条例
5 おわりに
第4章 文化芸術振興基本法制定の経緯と課題
1 はじめに
2 いわゆる「文化振興法」制定の動き
3 文化芸術振興基本法制定の経緯
4 文化政策研究の観点からみる本法の特徴及び評価
5 今後の課題──議員立法の課題と、法制定後の動向
6 おわりに
第Ⅱ部 ヨーロッパにおける文化政策と法
第5章 ヨーロッパにおける文化法の理論と制定状況
──ドイツ「文化基本法」概念の展開を中心に──
1 はじめに
2 文化国家概念の系譜
3 公法学の対象としての文化
4 文化基本法としての州憲法文化関連条項
5 現在の文化基本法制定状況
6 むすびにかえて
第6章 ドイツにおける芸術家社会保険法制定の意義
1 はじめに
2 芸術家の社会的地位
3 芸術家の労働者性
4 芸術家社会保険法制定の経緯
5 芸術家社会保険法の概要と運用状況
6 おわりに
第7章 フィンランド芸術振興法の特徴
1 はじめに
2 フィンランドの文化政策史
3 文化政策の政策決定過程と行政のシステム
4 文化関連法規の内容と問題
5 おわりに
第8章 オーストラリア文化振興法の構造と特徴
1 はじめに──本章の目的とオーストラリア共和国の概要
2 政党の政策概念としての「文化」の発展
3 オーストラリア連邦憲法における文化に関する権限
4 文化法の特徴と構造
5 文化法の構成
6 おわりに
第Ⅲ部 資料編
1 日本編
2 ヨーロッパ編
索引
内容説明
2001年の文化芸術振興基本法成立は、日本の文化政策に何をもたらすのか。従来、法学・政治学の研究対象とされることが少なかった文化政策の法的諸問題を明らかにし、政策展開の基本原理の抽出を試みる。
目次
第1部 日本における文化政策と法(戦後我が国の文化政策の変遷と文化法研究の背景と領域;特殊権としての文化権の特質―文化権の確立に向けて;我が国における文化法の現状;文化芸術振興基本法制定の経緯と課題)
第2部 ヨーロッパにおける文化政策と法(ヨーロッパにおける文化法の理論と制定状況―ドイツ「文化基本法」概念の展開を中心に;ドイツにおける芸術家社会保険法制定の意義;フィンランド芸術振興法の特徴;オーストリア文化振興法の構造と特徴)
第3部 資料編(日本編;ヨーロッパ編)
著者等紹介
小林真理[コバヤシマリ]
1963年東京生まれ。1996年早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。早稲田大学人間科学部助手、昭和音楽大学音楽学部助手、日本文化行政研究会事務局長を経て、2000年より現職。2001年博士(人間科学)。現在、静岡文化芸術大学文化政策学部講師
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。