出版社内容情報
20年以上にわたる武力紛争に終止符をうったカンボジアは、急速な復興の過程にある。国民和解、経済開発、復興という国民的課題に直面している今日、法の領域においてはどのような制度の整備と運用がなされているのだろうか。本書は、93年公布憲法を中心にこの問題を明らかにする。まず、人権保障とそのための権力の抑制という観点から憲法史を概観し、93年憲法を位置づける。次に人権の保障と統治の機構について、憲法上の規定と法令の問題点を検討する。あわせて93年憲法を頂点とする法体系の全体像とその機能を制約するものを探る。
内容説明
本書の特徴は、カンボジア法研究の動向を踏まえながら、現地での調査、資料収集を重ねて1993年憲法を頂点とする法体系の全体像とそれの機能を制約する要因の把握を試みた点にある。
目次
第1章 カンボジア憲法史
第2章 パリ和平協定と国連によるカンボジア暫定統治
第3章 カンボジア王国(1993年)憲法の起草過程と構造
第4章 カンボジア王国(1993年)憲法における人権とその保障
第5章 カンボジア王国(1993年)憲法における統治機構
結論
資料
感想・レビュー
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Chika
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現行憲法制定までの憲法の変遷。現行憲法(1996年)下の人権の保障、統治機構について。安定した政治を目指しているが、まだまだ未熟な政府の様子が垣間見られる。ポル・ポト派が行った知識人の集中的な虐殺は、特に尾を引いているようだ。警察を含む公務員の中には、しっかりとした教育を受けたものが少ないため、モラルの低さが目立ち、汚職が絶えないという。同様の理由で、司法の独立も確立できているとは言えない。教育や経験がいかに大事であるか。うむむ、復興にはまだまだ時間がかかりそうだ。2012/10/16