内容説明
種々の決まり=社会規範は、私達の生活する社会の根幹を成している。そのような仕組みを支える、ヒトの認知・感情メカニズムを探る。
目次
序章 「社会の決まりはどのように決まるか」という問い
第1章 協力の進化―人間社会の制度を進化生物学からみて
第2章 集団における協力の構造と協力維持のためのルール―進化シミュレーションと聞き取り調査
第3章 規範はどのように実効化されるのか―実験的検討
第4章 間接互恵性状況での人間行動
第5章 人間と動物の集団意思決定
第6章 集団の生産性とただ乗り問題―「生産と寄生のジレンマ」からの再考
著者等紹介
西條辰義[サイジョウタツヨシ]
1952年生まれ。ミネソタ大学大学院経済学研究科修了。Ph.D.(経済学)。カリフォルニア大学サンタバーバラ校経済学部助教授、筑波大学社会工学系助教授、大阪大学社会経済研究所教授を経て、高知工科大学制度設計工学研究センター長。文部科学省特定領域研究「実験社会科学―実験が切り開く21世紀の社会科学」代表。専門は制度設計工学、公共経済学
亀田達也[カメダタツヤ]
1960年生まれ。イリノイ大学大学院心理学研究科博士課程修了。Ph.D.(心理学、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校)。現在、東京大学大学院人文社会系研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ソーシャ
5
社会規範の形成について、適応論の見地からの研究をその第一人者たちが紹介した本。シミュレーションやフィールド研究、動物行動学の知見など幅広い見地からの研究がまとめられている内容の濃い一冊です。2015/02/18
Moloko
4
社会規範の実効化や共有地の悲劇の回避としてオストロムの共同執行的権力は知っていたが、エージェントを用いたシミュレーションや学生等を用いた実験や社会での実証研究によってどうやって社会規範が人々に守られるかがより深く考察できて面白かった。違反者や非協力者に罰を与えて彼らの利得を下げるから社会規範が成り立つという説も反証されつつあり、つまりコストや更なる反逆を招くような処罰よりも非協力や注意のような警告的な対応がより現実的であり、更に協力による利得が逓減的な社会設定で協力・非協力が決まる可能性が示唆されている。2018/02/17
南チョ
1
社会の決まり(社会規範)がどのように実効化されるかについて研究された内容をまとめた本です。非常に面白いテーマで、勉強になりました。特に、課題に対して協力しない人を罰することで、規範を実効化するということ。このときの罰は、明確なものではないことも多いということ(直接的に罰するのではなく、協力者に正のフィードバックを与えることで間接的に非協力者を罰する)が面白かったです。 第2章の、頼母子講の話は、冗長に思えました。要点だけで良かったように思います。2021/03/16
こずえ
1
社会規範の形成がどのような過程を経て作られるかを詳細に書いてある。社会学や、法学部で規範について興味がある学生向け。1年生からでも読めると思う。2018/02/18
Ryosuke Tanaka
1
両端章はエキサイティングだったが中間章は既存のモデルの重箱の隅的研究に終始している印象を受けた。個体レベルでの適応からマクロ現象を説明する、という社会心理学のプログラムの枠組みにとって、他分野のモデルにひろく目配せすることとその適用条件(適応主義の仮定がどこまで妥当か)を考えることは不可欠だと思われるが、あんまりそういうことを考えている人は国内にはいないのだろうか。2016/01/01