出版社内容情報
人の心はどこまで普遍的なのだろうか。文化による影響が行動や心だけでなく脳や遺伝子にまで及ぶとする文化神経科学のアプローチ。
心の普遍性を探究する心理学から派生した文化心理学、そしてそこに神経科学的手法を取り入れた文化神経科学は、文化的慣習がさまざまな心理過程に影響を及ぼすことを示し、さらにその基盤となる脳活動や遺伝子の解明にも貢献してきた。本書は「文化?心?脳?遺伝子」というつながりを軸に、心と文化の相互構成過程を明らかにする。
内容説明
心理学研究では長年、文化や言語の影響はノイズを与えるものとして軽視されてきた。しかし民族誌的研究が明らかにしているように、その影響は決して軽視されるものではない。となれば心理学の立場に基づき、個々の文化に生きることで実践されるさまざまな文化的慣習がどう心を作り上げているのかを明らかにするのが重要な研究課題となる。過去数十年、この研究課題に取り組んでいるのが文化心理学である。本書は、文化心理学におけるさまざまな知見とともに、その文化による影響が脳や遺伝子にまで至る可能性を探る文化神経科学のアプローチを紹介する。
目次
第1章 文化心理学の考え方(観念体系としての文化と「能動的な」人間像;文化心理学の方法;「文化の影響=一枚岩」であることの誤解;本書の構成)
第2章 認知、感情、自己―洋の東西の文化的差異(認知の文化差;感情の文化差;自己の文化差)
第3章 洋の東西を超えて―社会生態学的な要因による影響(生業;人々の流動性;社会階層;近代化・都市化)
第4章 脳内指標と文化(認知;感情;自己)
第5章 遺伝子、文化、心(社会・文化環境と遺伝子の共進化;社会・文化環境と遺伝子の相互作用;既存の知見の問題点;「中道的」アプローチの可能性)
著者等紹介
石井敬子[イシイケイコ]
京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了、博士(人間・環境学)。北海道大学社会科学実験研究センター助教、神戸大学大学院人文学研究科准教授、名古屋大学大学院情報学研究科准教授を経て、同教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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