出版社内容情報
日常的な対人関係のみならず、心理臨床実践においても重要な概念である「共感」をめぐる最先端の知見を、多彩な分野の専門家が解説。共感をめぐる研究は、脳画像研究の進展により、近年になって爆発的な広がりを見せている。本書は社会神経科学という新たなアプローチにより、社会心理学や認知感情神経科学、さらには、進化生物学から、ロジャーズ派の心理臨床にいたるまで、様々な分野にわたる共感研究を統合し、その機能や進化的/解剖学的起源を明らかにする。
イントロダクション
第1部 共感とは何か
第1章 共感とよばれる8つの現象[チャールズ・ダニエル・バトソン]
1.共感を答えとする2つの異なる質問
2.共感という用語の8通りの使い方
3.含意
4.結論
第2部 共感に関する社会的,認知的,発達的視点
第2章 情動感染と共感[エレイン・ハットフィールド,リチャード・L・ラプソン,イェン・チ・L・リー]
1.情動感染のメカニズム
2.既存の研究に関する含意
3.問題提起
第3章 模倣されることの効果[リック・B・フォン・バーレン,ジャン・デセティ,アプ・ダイクスターハイス,アンドリース・フォン・デア・レイユ,マータイス・L・フォン・レーウン]
1.翻訳のなかで失われた共感
2.模倣の自動性
3.模倣と共感
4.模倣されることによる向社会的効果
5.認知スタイル
6.模倣されることの社会神経科学
7.結論
第4章 共感と知識の投影[レイモンド・S・ニッカーソン,スーザン・F・バトラー,マイケル・カーリン]
1.相手が何を知っているかを判断する必要性
2.反射:逆方向の投影
3.投影に関する証拠
4.投影に関する統計学的な論拠
5.コミュニケーションにおける共通基盤の仮定
6.投影も失敗する可能性がある
7.投影の限界
8.共感の自然さ
第5章 共感精度[ウィリアム・アイクス]
1.定義
2.測定方法と選択可能な研究パラダイム
3.臨床心理学
4.認知心理学
5.発達心理学
6.社会心理学
7.生理心理学
8.共感精度研究の魅力と統合の可能性
9.結論
第6章 共感的反応:同情と個人的苦悩[ナンシー・アイゼンバーグ,ナタリー・D・エッガム]
1.共感に関連した反応
2.エフォートフルな(努力を要する)自己制御プロセス
3.エフォートフル・コントロール,自己制御,そして共感的反応
4.発達に関する諸問題
5.苦痛・共感・制御・愛着
6.結論
第7章 共感と教育[ノーマ・ディーチ・フェッシュバック,セイモア・フェッシュバック]
1.共感の諸機能
2.教師のための共感性の訓練
3.生徒達の共感性を育む
4.結論,そして将来の方向性
付録
第3部 共感に関する臨床的視点
第8章 ロジャーズ派の共感[ジェロルド・D・ボザース]
1.クライエント中心療法の理論
2.実現傾向に関する有機的な影響
3.クライエント中心療法における共感
4.クライエントとセラピストの有機的体験過程とロジャーズ派の共感との関係
5.臨床のシナリオ
6.考察
第9章 心理療法における共感:対話的・身体的な理解[マティアス・デカイザー,ロバート・エリオット,ミア・レイスン]
1.共感のサイクルと身体化された共感
2.クライエントの共感的共鳴
3.セラピストの共感的調律
4.結論
第10章 共感的共鳴:神経科学的展望[ジーン・C・ワトソン,レズリー・S・グリーンバーグ]
1.共感と神経科学
2.セラピストの共感能力を向上させる方法
3.共感を調節する諸要因
4.結論
第11章 共感と道徳と社会的慣習:サイコパスやその他の精神障害からの証拠[R・J・R・ブレア,カリナ・S・ブレア]
1.共感の定義
2.道徳性と社会的慣習
3.情動的共感と道徳的および慣習的推論
4.認知的共感と道徳的および慣習的推論
5.宥和表示に対する共感的反応
6.結論
第12章 他者の苦痛を知覚する:共感の役割に関する実験的・臨床的証拠[リーズベット・グーベルト,ケネス・D・クレイグ,アン・バイス]
1.定義に関する問題
2.正確な共感の効用と限界
3.苦痛に共感する成人の能力に関するモデル
4.結論
第4部 共感に関する進化的視点および神経科学的視点
第13章 共感に関する神経学的および進化的視点[C・スー・カーター,ジェームズ・ハリス,スティーヴン・W・ポージェス]
1.進化する自律的・社会的神経系
2.共感と哺乳動物における社会的気づきの進化
3.社会性の神経内分泌的基盤
4.高度に社会的な哺乳動物と向社会的行動の分析
5.要約と予測
第14章 「鏡よ,鏡,心の中の鏡よ」:共感と対人能力とミラー・ニューロン・システム[ジェニファー・H・ファイファー,ミレーラ・ダープレトー]
1.共感に関する定義の問題
2.共感の神経基盤
3.ミラー・ニューロン・システムと情動理解
4.ミラー・ニューロン・システムと共感
5.ミラー・ニューロン・システムと対人能力
6.結論,そして将来への方向性
第15章 共感と個人的苦悩:神経科学からの最新の証拠[ジャン・デセティ,クラウス・ラム]
1.自己と他者の間の共有された神経回路
2.視点取得,自他の区別,そして共感
3.共感的反応の調節
4.結論
第16章 共感的処理:認知的次元・感情的次元と神経解剖学的基礎[シモーヌ・G・シャマイ=ツーリィ]
1.認知的共感と感情的共感
2.共感の神経解剖学的基礎:前頭葉の役割
3.前頭前皮質の損傷による共感能力の障害
4.心の理論と認知的共感の関係
5.共感における前頭前皮質の役割に関するさらなる証拠:神経変性および精神医学的疾患をもつ患者を対象とした研究
6.認知的および感情的な共感反応のための神経ネットワーク
7.結論
訳者あとがき
執筆者一覧
人名索引
用語(和文)索引
用語(欧文)索引
ジャン・デセティ[ジャン デセティ]
ジャン・デセティ(シカゴ大学心理学部教授)
ウィリアム・アイクス[ウィリアム アイクス]
ウィリアム・アイクス(テキサス大学アーリントン校心理学部教授)
岡田 顕宏[オカダ アキヒロ]
岡田 顕宏(おかだ あきひろ) 1970年生まれ。北海道大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(行動科学)。札幌国際大学人文学部心理学科教授。専門は認知心理学, 感情心理学, 臨床心理学。
内容説明
他者の思考や感情を我々はどうやって知るのか。他者への思いやりはどうやって生まれるのか。
目次
第1部 共感とは何か(共感とよばれる8つの現象)
第2部 共感に関する社会的、認知的、発達的視点(情動感染と共感;模倣されることの効果)
第3部 共感に関する臨床的視点(ロジャーズ派の共感;心理療法における共感:対話的・身体的な理解;共感と知識の投影;共感精度;共感的反応:同情と個人的苦悩;共感と教育;共感的共鳴:神経科学的展望;共感と道徳と社会的慣習:サイコパスやその他の精神障害からの証拠;他者の苦痛を知覚する:共感の役割に関する実験的・臨床的証拠)
第4部 共感に関する進化的視点および神経科学的視点(共感に関する神経学的および進化的視点;「鏡よ、鏡、心の中の鏡よ」:共感と対人能力とミラー・ニューロン・システム;共感と個人的苦悩:神経科学からの最新の証拠;共感的処理:認知的次元・感情的次元と神経解剖学的基礎)
著者等紹介
岡田顕宏[オカダアキヒロ]
1970年生まれ。北海道大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(行動科学)。札幌国際大学人文学部心理学科教授。専門は認知心理学、感情心理学、臨床心理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。