内容説明
科学と医療が出会う場所で、今まさに求められている倫理とは?生命倫理学の一分野として生まれ、人を対象とする研究における被験者保護を扱う新しい学問分野=研究倫理。医学研究に焦点を絞り、重要な論点に即してその全体像を示す。
目次
序章 なぜ研究倫理なのか
第1章 医療倫理から研究倫理へ―日米比較
第2章 研究倫理の起源―六〇年代アメリカの政策形成
第3章 研究と診療の境界―七〇年代の理論モデル
第4章 臨床現場のジレンマ―ベルモント・レポート以後
第5章 専門職論からの視点―アポリアを乗り越えるために
終章 研究と診療の統合に向けて
著者等紹介
田代志門[タシロシモン]
1976年山形県に生まれる。2007年東北大学大学院文学研究科博士後期課程修了、博士(文学)。現在、東京大学大学院医学系研究科特任助教(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さとし
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「研究」と「診療」の区別から端を発して、研究倫理についての論を展開しており、ランダム化比較試験という、研究と診療を原理的に切り離すような研究方法の誕生に注目している。現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンや治療薬の迅速な開発が求められており、研究倫理において、「公共の健康」を優先しようとするCOVID-19の強風が吹き荒れている。その強風に流され居直るのは許されないことと自覚し、「研究」と「診療」のあいだで、粘り強く考え続けることが重要だと主張したい。2020/06/25
もりたく
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研究倫理が「研究者と被験者」間の搾取制約のためにあり、「医師と患者」間の診療倫理と区別されていないことを問題の本質と捉え、本来研究目的と診療目的で分けられるべき倫理審査委員会やICが日本で混同されていることを指摘する。 RCTという研究手法の革命が「治療の延長線上にある臨床研究」わ根底から変えたことに驚き。FDAが警察官ではなくて科学者集団というのも納得。2018/09/15