出版社内容情報
批判前期のカントに焦点を合わせ、理性批判の哲学の底に「理性」そのものの存立を脅かす、無定形な「不安」を探り当てる。
【目次】
まえがき
Ⅰ 人間学の地平
1 『美と崇高の感情に関する観察』の周辺
2 自然地理学の講義
3 『1765~66年冬学期の講義計画』による外観
4 伝記的背景
5 人間学の講義
6 アントロポロギア・トランスツェンデンタリス
Ⅱ 『視霊者の夢』の周辺
1 著作の成り立ちとその一般的性格
2 「前置き」の鮮明
3 知恵の次元
4 霊の共同体
5 視霊現象の説明理論
6 形而上学の夢と現実
Ⅲ カントとルソー―時代に先駆けるものの喜劇と悲劇―
1 問題の提起
2 ルソーによる覚醒
3 『視霊者の夢』・『ラモーの甥』・『対話』
4 死と再生のドラマ
5 思考のスタイルの転換
6 結び
Ⅳ 中間考察―「独断のまどろみ」時代の構造―
1 問題の提起
2 『オプティミズム試論』
3 1750年代の自然研究の底にあるもの
4 テオリアの砦
5 結び
Ⅴ Phaseπ-λの趣味批判関係遺稿について
1 哲学者の三つのイメージ
2 洞窟の薄明からの上昇
3 プラトン的二世界説の思考空間
4 批判哲学的思考の原基
Ⅵ 知覚の予科・火・エーテル演繹
1 思考の実質的基層
2 知覚の予科
3 『火についての考察大要』から『オプス・ポストムム』へ
4 結語
索引
初出覚え書き
内容説明
「理性批判」の哲学者であり、「人間学」としての哲学の提唱者でもあるカントの思考の根底には、むしろ、近世的「人間」主体と、また、近世的といわず西欧の伝統的「理性」一般との存立をおびやかし、その解体と根本的な編成変えとをうながす無定形な不安が、そうおもってみれば、すでにはっきりとうごめきはじめており、それが、また、思考のかくされた究極の原動力ともなっていたのではないか。一言でいえば、およそこのような見通しのもとに、これまで比較的目を向けられることのなかったカント哲学のかくされた基層に、ともかくも一つのさぐりを入れてみること、これが本書の基本的なねらいにほかならない。
目次
1 人間学の地平
2 『視霊者の夢』の周辺
3 カントとルソー―時代に先駆けるものの喜劇と悲劇
4 中間考察―「独断のまどろみ」時代の構造
5 Phase κ‐λの趣味批判関係遺稿について
6 知覚の予科・火・エーテル演繹
著者等紹介
坂部恵[サカベメグミ]
1936年神奈川県に生まれる。1965年東京大学大学院人文科学研究科博士課程満期退学。現在、桜美林大学教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。