出版社内容情報
ゲティア問題以降、知識とは何かをめぐって認識論はどのような道程を辿ってきたのか。最新の動向までを丁寧に解説する待望の入門書!
英米哲学の確固たる一分野でありながら、問題が多様化し、全体像を見通すことが困難となっていた現代認識論。ゲティア問題とその解決のための試みを軸に、外在主義の流れとその反動としての内在主義、さらに文脈主義や徳認識論、知識第一主義といった最新の動向まで、ダイナミックな展開を一望のもとに描く画期的な入門書が遂に登場。
内容説明
ゲティア問題以降、知識とは何かをめぐる議論はどのような道程を辿ってきたのか。論争の発端となった問題の解説から最新の動向まで、ダイナミックな展開を一望のもとに描く待望の入門書!
目次
第1章 知識の標準分析
第2章 ゲティア問題とは何か
第3章 因果説による対応―外在主義その1
第4章 信頼性主義への発展―外在主義その2
第5章 証拠主義という対案―内在主義
第6章 証拠の構造―基礎付け主義と整合主義、そして無限主義と基礎付け整合主義
第7章 文脈主義というムーヴメント―現代認識論の新展開
第8章 徳認識論の登場―信頼性主義の発展形
終章 知識第一主義は新しい地平を切り開くのか
著者等紹介
上枝美典[ウエエダヨシノリ]
1961年愛媛県に生まれる。1990年京都大学大学院文学研究科単位取得退学。1996年フォーダム大学大学院哲学研究科退学。現在、慶應義塾大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あ
3
ゲティア問題に端を発する英語圏の現代認識論が依拠するデフォルトの知識定義JTB(Justified True Belief)は、真理の対応説をベースにしている。Jは信念が根拠づけられていること、Tは信念が実在の側の在り方に照合して正しいことをそれぞれ条件として要求する。個人的にはJとTを独立な条件とみる発想(本書の理解はこの前提を必須としている)が理解できていないのだが、根拠付けは認識の枠組み内に留まる内在的なもので、真理は認識と実在の対応(?)という外在的な状態として考えればよいのだろうか。2024/08/19
愛楊
2
分析的認識論入門。「現代哲学のキーコンセプト」シリーズほどのクオリティの高さで満足できる入門書だった。まあ上手くいかないだろうね。なぜならば、「知識」という概念の解明は我々の直観の関数であり、我々の直観はその概念の社会的な使用に過ぎないからだ。可能世界を用いて無闇に形而上学化しようとするのも頂けない。2024/09/04
わんぱら
2
ゲティア問題を用いて、認識論(の中でも知識論)の展開を丁寧に追っていく本。内在主義や外在主義、鋭敏性、安全性などのこの問題に対する立場が、問題の解決法とその失敗、そして修正というストーリー仕立てで展開されていくので、どれも非常にわかりやすいし、位置づけが明確になる。どれも部分的にしか知らなかったので非常に勉強になった。他方で、認識論のテーマでも触れられていないこと(IBE関係)もあり、認識論の主題を網羅的に扱っているわけではない。ただ認識論が知識論を中心としているのは確かなので、分量からしてちょうどよい。2020/09/14
すずき
1
認識論の主要な議論をまとめた、優れた入門書。初歩的なことではあるが1章で必要十分条件について触れつつ、信頼性主義・徳認識論等の諸説の特徴づけでそれが効いてくる構成は、議論の要点をわかりやすくしていて良い。議論状況の整理としては特に文句はないが膨大に出てくる思考実験は直観を共有できないケースも多くあり、この点はまさに流行の実験哲学が補完している部分なのだろうと思う。整理の仕方にも色が出ると思うので7章の議論の幾つかは文脈主義に紐づけすぎない方がいいと感じる人もいそうでこの点は書評等に期待したいところ。2021/01/18
inu
0
現代認識論に関するややこしい話をコンパクトにまとめてくれているありがたい本2020/11/20