内容説明
哲学史にはじまり、現代メタ倫理学におけるトレンドであった「理由」の概念や道徳的実在論に関する論争、メタ倫理学上の反実在論・非実在論までを解説。さらには言語哲学や実験哲学といった哲学の他分野とメタ倫理学の関係も描きなおす。メタ倫理学の理解を一歩先へ。
目次
第1部 哲学史におけるメタ倫理学説(アリストテレスともう一つのメタ倫理学;ヒューム道徳哲学の二つの顔;カントの倫理学とカント主義のメタ倫理学)
第2部 現代メタ倫理学における一つのトレンド―「理由」の概念への注目(行為の理由についての論争)
第3部 道徳的実在論に関する論争(自然主義と非自然主義の論争について―自然主義と道徳の規範性からの反論を中心に;道徳的説明についての論争;進化論的暴露論証とはどのような論証なのか)
第4部 メタ倫理学上の反実在論・非実在論について(非認知主義についての論争;道徳的非実在論)
第5部 哲学諸分野からのアプローチ―言語哲学・実験哲学とメタ倫理学(義務様相表現の意味論;我々は客観主義者なのか?―メタ倫理学への実験哲学的アプローチ)
著者等紹介
蝶名林亮[チョウナバヤシリョウ]
創価大学文学部講師。Cardiff University哲学学科博士課程修了。Ph.D(Philosophy)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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すずき
3
読書会で通読。全体として質の高い論文集。この論文集のテーマで期待されてる内容ではないな…と思うものもいくつかあるが(特に1章)、概ねメタ倫理学の最近の議論をカバーする構成になっていて良いと思う(特に4〜9章)。自説の積極的な擁護よりもサーベイが期待されていてその趣旨で書かれたものが多いので、いくつかより丁寧に引用を行ってほしい文献もあった(特に7章は認識論関連のフレームワークについて参照先が欲しいのと、各文献ページ数まで細かく引いてほしいものが多い)。完璧でないにせよ貴重な一冊であるには間違いない。2020/12/02
田蛙澄
1
英米系の哲学書を読んでいるとメタ倫理的な区分がよく出てくるので、そのあたりを勉強しようと読んだ。行為の理由の内在/外在主義が動機づけの内在/外在主義とごっちゃになってなかなか理解ができなかった。様相論理における義務論理を補完する形で出てきたクラツァーやその発展的な理論の話が興味深かった。あとは非実在論との絡みで文脈主義がかなり魅力的に思えたし、実験哲学においても、人々は一貫して客観主義というよりその状況や場面で相対主義にもコミットして変動的なメタ倫理観を持っているというのは驚きだった。2022/11/29