出版社内容情報
科学技術が「帝国の道具(ツール・オブ・エンパイア)」であった諸相を検討。科学、思想、政治の複雑な錯綜を描き新たな地平を拓く。
序 章 「帝国日本の科学思想史」の来歴と視角[塚原東吾・坂野徹]
第一節 「科学と帝国主義」をめぐる歴史研究――先行研究と本書の来歴
第二節 本書の構成と視角
第一章 戦う帝国の科学論――日本精神と科学の接合[岡本拓司]
はじめに
第一節 思想統制の中の科学論
第二節 教学刷新と歩む科学論
第三節 第一高等学校の橋田邦彦
第四節 初期の教学局の活動と科学論
第五節 科学する心
第六節 日本科学論の展開
おわりに
第二章 帝国日本と台湾・朝鮮における植民地歴史学[アルノ・ナンタ]
はじめに
第一節 初期の「植民地史」研究(一八九二―一九一二年)
第二節 植民地の研究機構
第三節 植民地帝大の講座と植民地学会の刊行物
おわりに――「植民地歴史学」と「国民の歴史」の狭間で
第三章 帝国のローカル・サイエンティスト――気象学者・中村精男、小笠原和夫、藤原咲平[塚原東吾]
はじめに――日本風土論と気象学・地理学
第一節 二〇世紀前半の気候学・地理学――中村精男から小笠原和夫への系譜
第二節 藤原咲平――渦巻の理論と「オール・メテオロロジー」
おわりに――科学と帝国主義
第四章 植民地朝鮮の新旧暦書をめぐる相克――民衆時間に対する帝国権力の介入[宮川卓也]
はじめに
第一節 大韓帝国期――太陽暦の導入と葛藤
第二節 統監府期――伝統的観象事業の植民地的再編
第三節 朝鮮総督府期――『朝鮮民暦』と迷信打破・陽暦励行運動
おわりに
第五章 植民地朝鮮における温泉調査――知のヒエラルキーをめぐって[金 凡性]
プロローグ――朝鮮半島の温泉をめぐる視線
はじめに――温泉をめぐる知のヒエラルキー
第一節 未知の温泉に対する知の実践
第二節 鉄道、観光と温泉
第三節 温泉の化学と放射性物質
おわりに――帝国の知、ローカルな知
第六章 帝国を船がゆく――南洋群島調査の科学思想史[坂野 徹]
はじめに
第一節 占領と視察――『南洋新占領地視察報告』とは何か
第二節 「文明」から遠く離れて――土方久功と裸の「土人」たち
第三節 「来るべき日」のために――京都探検地理学会のポナペ調査
おわりに
第七章 米国施政下琉球の結核制圧事業――BCGをめぐる「同化と異化のはざまで」[泉水英計]
はじめに
第一節 占領公衆衛生史と結核対策の日琉比較
第二節 米国における結核対策
第三節 琉球の結核対策資源とその活用
第四節 日琉結核対策の相克と米国研修
第五節 比較対照試験としての結核制圧計画
おわりに
第八章 トラクター・ルイセンコ・イタイイタイ病――吉岡金市による諸科学の統一[藤原辰史]
はじめに――「立派な人」
第一節 自己形成期――岡山という条件
第二節 日本農業の機械化に賭ける
第三節 「東亜」から「戦後」へ
第四節 スターリニズムに根ざした総合的農学
第五節 公害の学問領域横断的な研究――イタイイタイ病
おわりに――横井時敬との奇妙な類似
あとがき
文献表
人名索引
事項索引
執筆者紹介
坂野 徹[サカノ トオル]
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塚原 東吾[ツカハラ トウゴ]
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内容説明
日清・日露戦争、第一次世界大戦、日中戦争から太平洋戦争へと、海外拡張する近代日本において、科学技術は「帝国の道具(ツール・オブ・エンパイア)」であり、拡張を支えるイデオロギーであった。異民族支配や文化接触、地域調査や資源探査、「帝国」内の知的交流…「帝国日本」で科学技術がもった意味と役割の諸相を描き、科学思想史の新たな地平を拓く。
目次
序章 「帝国日本の科学思想史」の来歴と視角
第1章 戦う帝国の科学論―日本精神と科学の接合
第2章 帝国日本と台湾・朝鮮における植民地歴史学
第3章 帝国のローカル・サイエンティスト―気象学者・中村精男、小笠原和夫、藤原咲平
第4章 植民地朝鮮の新旧暦書をめぐる相克―民衆時間に対する帝国権力の介入
第5章 植民地朝鮮における温泉調査―知のヒエラルキーをめぐって
第6章 帝国を船がゆく―南洋群島調査の科学思想史
第7章 米国施政下琉球の結核制圧事業―BCGをめぐる「同化と異化のはざまで」
第8章 トラクター・ルイセンコ・イタイイタイ病―吉岡金市による諸科学の統一
著者等紹介
坂野徹[サカノトオル]
1961年生。東京大学大学院理学系研究科博士課程単位取得退学、博士(学術)。現在、日本大学経済学部教授。専門は科学史、フィールドワーク史
塚原東吾[ツカハラトウゴ]
1961年生。東京学芸大学修士課程(化学)修了。ライデン大学医学部博士Ph.D.(医学)。現在、神戸大学大学院国際文化学研究科教授。専門は科学史、STS(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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