出版社内容情報
1285年頃の中世イギリスに、オッカムは生まれた。フランシスコ修道会士として教育を受けたものの、異端審問や清貧論争に巻き込まれていく。そんなオッカムについて、法哲学者・小林公は近代的権利観念との関係から興味をもった。幅広いオッカム思想の内的連関を探って、著者40年の時間をかけてまとめあげたオッカム研究の集大成。
内容説明
「オッカムの剃刀」で知られる中世スコラ哲学者ウィリアム・オッカム。神学から法学、論理学まで広がるその思想をていねいに紡ぐ。幅広いオッカム思想の内的連関を探り、著者40年の時間をかけてまとめあげた集大成。
目次
第1部 法・政治思想(清貧と所有;バイエルンのルートヴィヒとローマ教皇;教会論;世俗権力論;翻訳)
第2部 哲学・神学思想(直観的認識と抽象的認識;関係論;個と普遍;神の予知 必然性 自由;聖餐論;神と自然法)
著者等紹介
小林公[コバヤシイサオ]
1945年生まれ。東大法学部卒業、立教大学教授等を経て、2011年同大学定年退職。立教大学名誉教授。専門は法哲学・法思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Ryoma Okamura
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また教皇は、キリストが死すべき人間たるかぎりで有していたあらゆる権力を有していたとさえ言えない。王としてのキリストが有していた権力を教皇が授与されているとすれば、教皇はあらゆる人間を奴隷にし、恣意的に人々に義務を課し、或る君主の王国を自由に他の君主に委譲できることになるが、罪を犯しうる弱い人間にキリストがこの種の権力を授与したなどと考えるひとはいないだろう(pp.248-249)。2022/03/06
Ryoma Okamura
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しかし既に述べた如く、神が自己以外の存在へと向けて行為する場合、何らかの実践的原理に拘束されると考えることは神の自由意志の否定となり、これはスコトゥスが基本的に否定するところであった。従って規範として必然的自明的に妥当するのは「神を愛すべし」という規範のみであり、その他、殺人、窃盗などを禁ずる規範は神の意志にのみ依存する偶然的な実定規範にすぎない。従って十戒の第一表に含まれる規範以外の掟を神は任意に特免することが可能である(p.1045)。2020/12/14