内容説明
カント哲学の真髄は、自然科学的認識の本質を洞察し、実験的方法の導入によって新しい形而上学を打ち立てたことにある。あるがままでなく、あるべきカントの姿を捉えるための精緻な議論。
目次
序論 「純粋理性批判」に対する本書の態度
第1章 「純粋理性批判」の意図と方法
第2章 感性と悟性―生験的感性論とカテゴリーの形而上学的演繹
第3章 認識の具体相―カテゴリーの先験的演繹
第4章 理論的認識の発展―原則の分析論
第5章 理論的認識の限界―先験的弁証論
著者等紹介
岩崎武雄[イワサキタケオ]
1913年東京都に生まれる。1936年東京大学文学部哲学科卒業。現在、東京大学名誉教授。1976年歿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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なつめいろ
6
『純粋理性批判』の註釈書。<カントが事実どう考えていたのかではなくどう考えるべきであったかを問題にする>という方針で、カントの議論に対する全面的な批判と大胆な修正が試みられている。岩崎は、カントが自然科学を確実な学問のモデルとしその特徴である実験的方法を形而上学へ導入しようとした点を高く評価する。しかし岩崎によれば、自然科学の実験的方法において投げ入れられるのは実際には経験的な性格の仮説であるのに、カントはこれをアプリオリな判断と誤解し、「認識論的主観主義」という誤った理論を立ててしまったというのである。2016/02/12