内容説明
日本人の魂の原郷を求める遙かな旅。柳田国男の思想の神髄ここに明らかに。著者渾身の書き下ろし、1500枚成る。吉本隆明氏推賞の力作。
目次
1 雪国の春(木綿以前と食物;無名者の貌;民俗学的地平)
2 遠野物語(詩から農政学;旅の感受の転変;遠野物語;珍奇なるもの)
3 桃太郎の誕生(蝸牛と世相;言葉の生活誌;桃太郎の誕生;常民という概念)
4 海上の道(祭り・神道・先祖;戦中から戦後;海上の道;道の果て)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
てれまこし
5
柳田論は数あるが、柳田よりも書いた本人やそれを受容する読者について多くを語っていることが多い。時系列に丁寧にテクストを追って、いくつかの柳田の思想的転換点について鋭い考察がある。惜しいかな、著者は吉本隆明と仕事をした人のようで、非ヨーロッパ国の知識人であるという罪を民族派になることによって贖おうとしている。確かに、柳田はそうした想いに心強い武器を提供する。だが「民族的心性への執着」とか「ヨーロッパ的な普遍主義への敵対」という曖昧な標語のなかに、柳田の思想的な迷走を無理にはめ込むような形になってしまった。2019/06/04