内容説明
ナショナリズムとノスタルジアに特徴づけられた80年代英国のヘリテージ映画を、グローバル/ローカルに転回したポスト・ヘリテージ映画。そこに脈打つサッチャリズムと帝国アメリカの文化を読み解く。
目次
グローバル/ローカルな文化地政学へ
第1部 トランスアトランティックな転回?―90年代英国映画のマッピング(ケイト・ウィンスレットと文化の移動―ロマンティック・コメディの「臨界」;大英帝国と銀河帝国のバイオポリティクス―ポスト・ヘリテージ映画が繋ぐ二つの世紀;サッチャリズムの終焉?―イングリッシュ・コメディの新たな転回とA Fish Called Wanda)
第2部 終わらないサッチャリズム?―80年代映画とナショナリズム再考(「保守党は彼をイギリス人と呼ぶ」―『炎のランナー』とカルチュラル・レイシズムの遺産;文化の女性化をめぐる抗争―アガサ・クリスティと「保守的モダニティ」;『スキャンダル』―金融資本とカントリーハウスの文化)
英米の「特別な関係」のかなたへ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
76
何度も観たお気に入りの映画『フルモンティ』と『トレインスポッティング』を北部の工業労働者達の姿を表彰するのだという説明に驚き納得。ペシミスティックに描かない風刺性は文学でも映画でもイギリスにはあるんだなあ。 以下は、序章からの抜粋。記憶のために。 「1980年代初頭以来、ノスタルジックに薔薇色に彩られ美化された過去の英国のイメージを描いた、ヘリテージ映画と呼ばれる一連の映画があった。代表例の一つは、1924年のオリンピックで活躍した陸上選手の勝利の物語を愛国的に描いている「炎のランナー』(1981)。2025/03/28