内容説明
泥にまみれて広島で救助活動を行った1匹の災害救助犬。夢之丞という名のその犬は殺処分寸前で救われた犬だった―殺処分直前に動物愛護センターから引き出された1匹の子犬。おくびょうで人をよせつけず、散歩すら苦手。食べ物への欲もなかったこの子犬は、やがて新米ハンドラーと共に訓練をこなし災害救助犬として新たな一歩をふみだした。
著者等紹介
今西乃子[イマニシノリコ]
大阪府岸和田市生まれ。航空会社広報担当などを経て、児童書のノンフィクションを手がけるようになる。執筆のかたわら、「国際理解」や愛犬を同伴して行う「命の授業」をテーマに小学校などで、出前授業を行なっている。児童文学者協会会員
浜田一男[ハマダカズオ]
千葉県市原市生まれ。1984年フリーとなり、写真事務所を設立。第21回日本広告写真家協会(APA)展入選。企業のPRおよび、雑誌『いぬのきもち』(ベネッセコーポレーション)等の撮影に携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ハイランド
71
周りの犬が殺処分されていく中、たまたま訪れたNPOの人に貰われ、救われた犬夢之丞。人におびえる夢之丞が、災害救助犬として新たな使命を持って再生していく物語。ペット売買が巨大市場であり、ペットが商品、使い捨てという風潮の日本。ペットも命であり、等しく価値のあるものであること、飼うと決めた以上は、その命が尽きるまで責任もって共に生活していくという覚悟が、ペットを飼うにあたっては必要だと思います。表紙の夢之丞の自信に満ちた表情が、すべての命に、等しく無限の可能性があると信じさせます。いろいろ考えさせられる一冊。2016/05/20
道楽モン
57
歴史の長い人間と犬の関わりの中、その無償の愛と信頼を利用したり裏切っているのは常に人間側だ。人間に捨てられ、処分が決定し、その寸前で救われ、訓練をされ、救助犬として役に立つ。この夢之丞の健気な物語の裏側には常に人間の勝手なエゴに振り回されている犬族の悲哀が横たわっている。未知の環境で恐怖に怯え心を閉ざす子犬時代のエピソードに胸が詰まるが、これすらも勝手に彼らの心情を擬人化している人間の偽善なのかもしれない。少なくとも、彼らの発する無限の信頼感と愛だけは本物であると断言できる。表紙写真の凛々しい姿が眩しい。2025/09/01
馨
35
ニュースで見て気になったので。捨て犬だった夢之丞が災害救助犬として頑張っています。人間の身勝手によって捨てられ、最初は人間不信だったと思います。トレーナーさんたちによる訓練と愛情により、立派な救助犬となって凄いです。殺処分される犬たちが1匹でも減ってほしいものです。2015/06/23
みゆき
30
再読。広島県動物愛護センターで殺処分される予定だった犬が手違いで一匹だけ残っていた。ブルブル震えていた子犬を抱っこしただけで、恐怖のあまりおしっこを漏らしてしまったと言う。どんなに怖い思いをしていたのだろうか。涙が出る。『命をどこまで輝かすことができるのか、その可能性は犬ではなく、人間次第だ』という気概を持ってトレーニングするハンドラー、その気持ちに応えようとする犬。彼らは一心同体だ。災害救助にあたる人々と共に犬がいることを忘れてはいけない。命の尊さ、希望、人間と犬の絆、多くのものが詰まっている作品。2021/07/30
けんとまん1007
29
いろいろなことを考えさせられる1冊。いのちとは・・・と考える。犬に限らないが、人間のエゴのために殺処分される数は、膨大なものがある。ふと、思った。「処分」という言葉が使われている事実。そんな中、偶然が重なり、生き延びた夢之丞。可能性と、能力ということを考えた。考えるだけではだめで、そこから一歩を踏み出さないと、何も変わらない。可能性は拡がらない。最近、自分の身の回りを見ていて、痛いほど、それを感じている。勇気をもらった。踏み出そう、明日へ。2016/06/05