「弱者」はなぜ救われないのか―貸金業法改正に見る政治の失敗

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  • サイズ B6判/ページ数 197p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784322121612
  • NDC分類 338.77
  • Cコード C2033

出版社内容情報

「弱者救済」という無垢の善意が生んだ「規制」が、逆に弱者の足かせとなって、弱者をさらに弱い立場に追い込む現実を、2006年の貸金業法の改正を主な題材として明らかにする。著者は元国会議員で、自民党の金融問調査会の「貸金業制度等に関する小委員会」の委員長として、改正に携わった。改正した当事者が、なぜ誤った改正をしてしまったのかを吐露した問題作。ノンバンク業界はもとより、多重債務問題、ヤミ金問題等に関心をもつ弁護士、司法書士等も看過できない警告の書。

目次

はじめに

第1章
下流から最下流への転落
─ 過剰な正義感、善意が国を滅ぼす ─

民主党政権下で急増した生活保護受給者数/年収300万円以下の人口が4割を超えた!/なぜ日本はここまで追い詰められたのか?/世界金融危機が日本にも波及/弱者救済のための規制が抱えた矛盾/モラトリアム法は中小企業を救ったのか?/経済の活力をそぐ規制がなぜ採用されるのか?/「コンクリートから人へ」が招いた結果/下流に転落するきっかけを生み出した法改正

現場ルポ 「ヤミ金被害」は本当に減っているのか

第2章
政治が失敗する理由
─ 歪められた貸金業法改正のプロセス ─

政治と政治家の限界が現れた法改正/多重債務者に関するマスメディアの感情的論調/人々の記憶に刷り込まれたヤミ金事件/最後は“シロ” と判断されていた、アイフルの取り立て電話/正規の貸金業とヤミ金はまったくの別物/上限金利引き下げで、貸し込みが進んだ/自民党の金融調査会で法改正を担当/「総量規制」をどうするかが最重要検討課題に/マスコミが「団体生命保険」廃止を誘導/正しく報道されないと嘆く現場の記者/あの遠山の金さんが反対した貸金規制/法的安定性を欠く最高裁判決/「総量規制」は立法府の犯した明らかなミス/後からわかった「総量規制」の影響の大きさ/おざなりになった完全施行前の見直し/二つの法律で異なる上限金利規制/「ホワイトナイト」が壊した金額区分見直し案/葬られた「マル適」業者向け特例金利案

現場ルポ 借りられなくなった中小零細事業者の悲劇

第3章
救済されなかった弱者たち
─ 弱者保護政策の失敗とあるべき姿 ─

「前門の虎」「後門の狼」に挟まれたノンバンク/「後門の狼」─最高裁判決が招いたとんでもない事態/本当にヤミ金被害は減っているのか?
多重債務問題のその後/「弱者保護」がさらなる弱者を生んでいく/人間の歴史とは切っても切れない貸金業/経済に不可欠なノンバンクの存在/諸外国のノンバンク規制/多重債務者対策で効果を上げている国の知恵/日本の多重債務者対策には何が足りないか?/血の通わない対策・制度では意味がない/過払い金返還請求の適正化を図る方法/ノンバンクを健全化しないと、日本はカネ詰まりに/ノンバンクを健全化する処方箋/弱者を生む負のスパイラルを絶ち切れ/弱者保護政策のあるべき姿

現場ルポ 人はなぜ下流から最下流に落ちるのか

第4章
政治はなぜ間違うのか
─ 政策決定のプロセスに潜む危機 ─

国民に優し過ぎたギリシャの財政破綻/大統領が思ってもできないアメリカの混迷/票とマスメディアに迎合する日本の政治家/セーフティーネットか事前規制か/改正労働者派遣法案のパラドックス/ポピュリズムに傾くのはなぜか?/マスメディアが陥りやすい罠/TPP賛成派と反対派の対立構造/政治力を高めるにはどうしたらよいか?/金融危機が日本を再び襲う前になすべきこと

おわりに

著者紹介
増原 義剛
ますはら よしたけ

1969年
東京大学法学部卒業後 大蔵省(現財務省)に入省
主計局課長補佐、在英国日本国大使館参事官、
国税庁・主税局・環境庁で課長

1995年
大蔵省東海財務局長で退官

2000年
衆議院議員に当選(2009年まで3回当選)
その間、
内閣:総務大臣政務官、内閣府副大臣
国会:予算委員会と財務金融委員会の理事、自民党の国対副委員長
自民党:税制調査会幹事、財務金融部会長代理、金融調査会小委員長等

2011年
広島経済大学 教授 今日に至る

内容説明

借地借家法、中小企業金融円滑化法、労働者派遣法そして貸金業法。「弱者救済」という善意の生んだ「規制」が日本をダメにしている。貸金業法改正に携わった元国会議員が、政治と政治家の限界を吐露した。

目次

第1章 下流から最下流への転落―過剰な正義感、善意が国を滅ぼす(民主党政権下で急増した生活保護受給者数;年収300万円以下の人口が4割を超えた ほか)
第2章 政治が失敗する理由―歪められた貸金業法改正のプロセス(政治と政治家の限界が現れた法改正;多重債務者に関するマスメディアの感情的論調 ほか)
第3章 救済されなかった弱者たち―弱者保護政策の失敗とあるべき姿(「前門の虎」「後門の狼」に挟まれたノンバンク;「後門の狼」―最高裁判決が招いたとんでもない事態 ほか)
第4章 政治はなぜ間違うのか―政策決定のプロセスに潜む危機(国民に優し過ぎたギリシャの財政破綻;大統領が思ってもできないアメリカの混迷 ほか)

著者等紹介

増原義剛[マスハラヨシタケ]
1969年東京大学法学部卒業後大蔵省(現財務省)に入省。主計局課長補佐、在英国日本国大使館参事官、国税庁・主税局・環境庁で課長。1995年大蔵省東海財務局長で退官。2000年衆議院議員に当選(2009年まで3回当選)。その間、内閣:総務大臣政務官、内閣府副大臣、国会:予算委員会と財務金融委員会の理事、自民党の国対副委員長、自民党:税制調査会幹事、財務金融部会長代理、金融調査会小委員長等。2011年広島経済大学教授、今日に至る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

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Yuichi Tomita

4
政治家(自民党)の立場から貸金業法改正を失敗と説くもの。憲法学者とは異なり政治的アプローチから、実態調査なく、マスメディアの推進する「弱者救済」という流れで安易に改正の内容が決まったと主張する。事前規制ではなく、セーフティネットによる事後救済でも良かったのではないか、成立後の3年後の見直しのタイミングでは民主党政権でロクな見直しは行われなかったという点は確かにそういう面があるのかもしれない。また、単純な善悪の二元論に傾きすぎているという所も同意。一度成立した法律を変えるのは難しい。2022/01/09

リョウ

4
国会議員ですら、いや、国会議員だからこそマスコミの流れに逆らうことができずに一見弱者の役に立つようで実際には不合理な法律ができてしまう。その典型が総量規制を含む貸金業法の改正だという。国会議員は頭では理解しているのなら、もっと根拠に基づいた情報発信をしてほしい。2013/01/03

atog2_435

3
弱者救済という錦の御旗を掲げ、法治国家の根底を狂わしてしまう、天下の悪法である貸金業法改正が成立してしまった背景を検証している書。 おそらく普通の人であれば、こんな法律が通るはずがないと思うのですが、司法も政治家もメディアも国民の代表のようなものなので、国民のリテラシーが欠如しているといか言いようがない。 というより、私を含めた個人個人が傍観者ではなく、もっと声を上げで行くしかないと思いました。2015/03/30

ちくわ

2
⭐️2015/10/19

oko1977

0
メディアが劇場型として流す極端な弱者を、政治家が選挙を意識して政策を立案してしまうことが原因と述べている。実際は副作用もあり弱者にもそれぞれあるので、裏どりや影響の分析が必要だが、日本では公費で雇える秘書官の数が少ないため、鵜呑みにしてしまう。 地獄への道は善意で舗装されている。と言われるとおり、わかりやすい正義が必ずしも社会をよくするとは限らないということだ。 社会問題は白黒がはっきりつくようなものではない。知識とは異なる考えを抱えそれを両立させていく能力。と言われるように、意識を改めるべきだろう。2013/02/22

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