出版社内容情報
放射線計測はその初期から放射線や放射能の利用に道を拓いてきた。現代では、エネルギー技術としての原子力発電、核医学や放射性医薬品学などの医学利用、製造業での品質管理や工程管理での利用、食品の放射線照射による保存性の確保など、社会に直結した様々な技術を支える存在となっている。
こうした実務領域での多様性を考慮し、まず共通の基礎となる事項を前半で解説する。Chapter 1~3 では、放射線と放射能の性質、放射線計測についての基礎的な概念を中心に解説する。Chapter 4~6 では、γ 線スペクトロメトリーや液体シンチレーション検出装置などの現代の分析実務の場で中核的な役割を演じている計測技術を中心に解説、Chapter 7 では放射線計測の感度が低下する長半減期核種の分析に向いた質量分析(粒子計測)を取り上げる。後半では、より具体的な計測技術や分析手法の応用について、対象試料や分析ニーズを意識しながら解説する。Chapter 8、9 では環境放射能分析を扱う。この分野での放射線計測のニーズは福島第一原子力発電所事故を契機に急激に増加した。また、今後も環境回復プロセスの進行を支える基盤技術の一つとして重要な役割を担うこととなる。Chapter 10~12 では放射線や放射性核種を利用した分析法に焦点を当てる。Chapter 10 では非放射性の微量元素分析の代表的手法の一つである放射化分析、Chapter 11 は放射性トレーサーを利用する分析手法であるラジオイムノアッセイなど、Chapter 12 は状態分析あるいはキャラクタリゼーションの手法としても発展してきたメスバウアー分光法、陽電子消滅、中間子利用分析、ラザフォード散乱などに焦点を当てる。
本書が日頃から分析技術を担う方々の手の届く所に置かれ、より高度な知識を扱う専門書や文献などを扱う際の一助となればと思う。また、新たな分析ニーズに対処する際に、放射線計測技術の利用についてのヒントを与えるものとなればとも思う。