出版社内容情報
本書では,単体分割できるとは限らない距離空間のトポロジーを,位相空間論的というよりはむしろ幾何学的な側面に焦点を当てて研究する理論の一部を紹介する。このような理論は一般位相幾何学の一分野「幾何学的トポロジー」をなしており,複雑な構造をもつ距離空間を多面体の極限としてとらえ,無限反復および極限操作を通じて調べることにその特徴がある。
様々な極限操作で得られる空間についての考察から始めて,コンパクト距離空間の次元および,ホモトピー型の拡張概念としてのシェイプ型について触れたのち,チェックコホモロジーによるコホモロジー次元論,位相多様体の特徴づけ問題の入り口を解説する。これらの概念の応用例としてコンパクト化の境界,1次元位相力学系の射影極限,リーマン多様体の極限などに現れる空間のトポロジーについてごく簡単に触れる。
これらの主題に関するまとまった解説を邦書の中に見出すことは難しく,また通常の学部教程において取り上げられることも少ない。本書がこのような研究分野の魅力の一端を伝え,進んだ話題に取り組むための一助となることを願っている。
目次
第1章 はじめに
第2章 多面体近似および極限操作
第3章 位相次元
第4章 ANR空間・シェイプ型およびCell‐like写像
第5章 コホモロジー次元とCell‐like写像
第6章 位相多様体の特徴づけとCell‐like写像
第7章 コンパクト化とその境界
付録A 単体的複体
付録B 未解決問題再録
著者等紹介
川村一宏[カワムラカズヒロ]
1988年筑波大学大学院博士課程数学研究科数学専攻中途退学。現在、筑波大学数理物質系数学域教授、理学博士。専門は位相幾何学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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