出版社内容情報
近年の統計科学では、原因と結果の因果関係を正確に知ろうとするアプローチが盛んであり、これらのアプローチは一般に因果推論と呼ばれている。本書で扱う傾向スコアも、因果推論を主眼とする方法の一つである。一般的に、処置の有無をランダムに割り当てることのできない調査観察データでは、処置群と統制群の間に属性の違いが生じる。傾向スコアとは処置の有無に影響を与える複数の情報を集約した要約指標であり、この要約指標を用いて、あたかもランダム化実験が行われたかのように、処置群と統制群の元々の属性の違いを調整する。
本書では、第1章で傾向スコアの基礎となる方法や仮定をレビューし、第2章で傾向スコアのモデリングと評価の概要について説明する。また一般的な傾向スコア法(マッチング、層別化、逆確率加重、共変量調整)をレビューし、第3章では、これらの手法のうちいずれの方法を採用すべきなのかを検討する。さらに、第4章では、処置群と統制群のバランスをとるための個々の共変量の評価や調整後の因果効果の推定など、応用面で生じる問題について検討し、最終章は傾向スコアを用いるアプローチの限界についての議論で締めくくられる。
本書は傾向スコアを詳しく理解したい初学者や、観察データを用いた因果推論を行いたい分析者にとって最適の入門書である。
[原著: Propensity Score Methods and Applications, Sage Publications, Inc., 2018]
内容説明
実践的な例をもとにひとつの手法を深く掘り下げて解説!傾向スコアの推定からマッチングなど各手法を手順ごとに紹介。基本的な考え方をやさしく明快に説明。制約や限界を理解し、適切に傾向スコアを利用した因果推論を学ぶ。
目次
第1章 傾向スコアの基本的な考え方(因果推論;傾向スコア ほか)
第2章 共変量選択と傾向スコア推定(共変量選択;傾向スコア推定 ほか)
第3章 傾向スコア調整法(傾向スコアマッチング;その他の傾向スコア調整法 ほか)
第4章 共変量評価と因果効果推定(共変量分布のバランスの評価;因果効果の推定 ほか)
第5章 まとめ(傾向スコア法の限界とその対処法;分析手順のまとめ ほか)
著者等紹介
Bai,Haiyan[BAI,HAIYAN] [Bai,Haiyan]
セントラルフロリダ大学教授。シンシナティ大学にて定量的研究方法論の博士号を取得。専門は、社会科学・行動科学における傾向スコア法、リサンプリング技術、研究デザイン、測定、統計手法の応用といった統計的・計量的手法を中心とした問題
Clark,M.H.[CLARK,M.H.] [Clark,M.H.]
セントラルフロリダ大学講師、統計コンサルタント、政策評価士。メンフィス大学にて研究デザインと統計学を専門とした実験心理学の博士号を取得。専門は、因果推論、非ランダム化実験における選択バイアス、傾向スコア法
大久保将貴[オオクボショウキ]
2017年大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。現在東京大学社会科学研究所附属社会調査・データアーカイブ研究センター特任助教。博士(人間科学)。専門は社会学方法論、社会調査方法論、社会保障
黒川博文[クロカワヒロフミ]
2017年大阪大学大学院経済学研究科博士後期課程修了。現在兵庫県立大学国際商経学部准教授。博士(経済学)専門は行動経済学、労働経済学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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