出版社内容情報
「ちくわの端と端をくっつけると穴が2つになる」という発見を端緒に、広大なトポロジーの世界へといざなう入門書
「ちくわの端と端をくっつけると穴が2つになる」
という発見をした子どもが、その興奮をお母さんに伝えるにはどうしたらよいでしょうか。「穴」とは正確に言うと何なのか、「2つ」とは何をどうやって数えているのか、2つの穴の関係はどうなっているのか、そういうことを「伝わる言葉」にしなければなりません。そのような言葉を与えてくれるのがトポロジーという数学の分野です。
本書ではまず、曲面とその上の曲線や、点と点を線でつないでできる図形(グラフ)のような「見える」図形を、トポロジーの観点から調べていきます。図形の一部をくっつけたり切り離したりすると、「見えない」図形も出てきます。「見える」図形の世界と「見えない」図形の世界は、「くっつけたり切り離したり」を言い直す言葉―位相空間の言葉―によってつながっています。こうして私たちは「見えない」図形たちの待つ広大な未知の世界へと出発することができます。
そして、「見えない」図形の特徴を捉えようとするとき、群の概念から力をもらいます。「図形の特徴を群の言葉で表すということ」もまた数学の対象に他ならず、それを圏の言葉によって語ることができます。そこまで歩みを進めたとき、冒頭の子どもの発見を
「トーラスの1次ホモロジー群はランク2の自由アーベル群である」
と言い直し、さらに2つの穴の関係を双対性の概念を用いて伝えられるようになっているのです。
【キーワード】
回転数、近傍、写像・集合族・同値関係、群、同相、ホモトピー、基本群、単体複体、ホモロジー、多様体
【目次】
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- 和書
- セメントの常識