出版社内容情報
学部3年次程度の代数学の講義のうち環論の知識を仮定して,代数曲線について初歩から解説し,因子と線形系による代数曲線の射影空間への埋め込みなど,代数曲線を本格的に研究するための基礎知識を与えることを目的としている。環論の必要な知識は第1章で復習しているので,学部3年次以下の学生でも学習することができる。層のコホモロジー理論を使うのが分かりやすい,リーマン・ロッホの定理の証明は他書に譲っているが,その他の結果はできる限りの説明と厳密な証明を与えている。
本書では,代数曲線(詳しくは非特異射影代数曲線)を射影平面曲線の特異点解消として定義している。また,代数曲線の関数体の離散的付値環全体を,離散的付値環と代数曲線の点の局所環という関係で,1対1にパラメータづける集合でもある。離散的付値環の性質は3年次で学習する単項イデアル整域,ユークリッド整域,素元分解整域に通じるもので,取り扱いは3年次の講義の自然な延長である。したがって,3年次の講義の抽象的定義の奥に,代数曲線という具体的で魅力のある内容があることを理解することができるであろう。
一部の結果は引用によっているが,取り扱う結果は本書の説明で十分に理解できるように工夫してある。したがって,興味のある読者は自習することも可能である。
第1章 環論からの復習
1.1 イデアルの定義
1.2 剰余環
1.3 整域と素イデアル
1.4 商環と商体
1.5 素元分解整域
1.6 ネーター環と有限生成加群
1.7 ネーターの正規化定理
1.8 ヒルベルトの零点定理
第2章 アフィン平面代数曲線
2.1 有理曲線と非有理曲線
2.2 テーラー展開と曲線の非特異性
2.3 代数曲線の局所環
2.4 曲線の交叉と交叉数
第3章 射影平面代数曲線
3.1 射影空間
3.2 射影平面代数曲線
3.3 非特異射影平面代数曲線の局所環
3.4 ベズーの定理
3.5 非特異射影平面曲線上の因子
3.6 線形系と有理写像
3.7 微分加群と標準因子
第4章 代数曲線のいろいろ
4.1 射影平面のブローイング・アップ
4.2 射影平面代数曲線の特異点解消
4.3 非特異射影代数曲線上の線形束
4.4 楕円曲線
4.5 フェルマー曲線
参考文献
索引
宮西 正宜[ミヤニシ マサヨシ]
増田 佳代[マスダ カヨ]
目次
第1章 環論からの復習(イデアルの定義;剰余環 ほか)
第2章 アフィン平面代数曲線(有理曲線と非有理曲線;テーラー展開と曲線の非特異性 ほか)
第3章 射影平面代数曲線(射影空間;射影平面代数曲線 ほか)
第4章 代数曲線のいろいろ(射影平面のブローイング・アップ;射影平面代数曲線の特異点解消 ほか)
著者等紹介
宮西正宜[ミヤニシマサヨシ]
1940年滋賀県生まれ。1965年京都大学大学院大学院理学研究科修士課程修了、同年、京都大学理学部助手、1967年同講師、1972年大阪大学理学部助教授、1984年同教授となる。2003年‐2009年関西学院大学理工学部教授。現在、関西学院大学数理科学研究センター客員研究員。この間、代数学関係の講義を行うと同時に、カナダ・アメリカ・フランス・ドイツ・インド・中国など多くの大学で教育と研究に携わる。理学博士。大阪大学名誉教授
増田佳代[マスダカヨ]
1963年大阪府生まれ。1995年大阪市立大学大学院理学研究科博士課程修了。同年、明石工業高等専門学校講師。1997年姫路工業大学(現、兵庫県立大学)講師。同助教授を経て、2009年関西学院大学理工学部教授。この間、代数学、変換群関係の講義を行うと共に、多数の国際研究集会で発表を行う。また、関西学院大学大阪梅田キャンパスで、「アフィン代数幾何学研究集会」を共催する。博士(理学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。