出版社内容情報
安全工学のパラダイムシフトともいえる新しいアプローチSTAMP(システム理論に基づく事故モデルとプロセス)について実例豊富に解説
工学の世界は大きな技術革命を経験しつつあるが、安全・信頼性工学における基本的な方法論は信頼性理論をベースとしたもので、長年にわたってほとんど変化していない。この画期的な本書の中で、著者のナンシー・レブソンは、今日の複雑でソフトウェア集約型の社会技術システムの安全設計のために、より適した新しい考え方・アプローチであるSTAMP(システム理論に基づく事故モデルとプロセス)を提案している。これはシステム思考とシステム理論に基づいた安全工学のパラダイムシフトともいえる新しいアプローチであり、「故障の防止」から「振る舞いに関する安全制約の強化」へ、「信頼性の確保」から「安全のコントロール」へと焦点を変えた。
このアプローチは、米国のブラックホーク・ヘリコプターに対する味方への誤射による事故、バイオックスの薬品リコール、アメリカ海軍のSUBSAFE安全管理プログラム、そしてカナダの町の公共水道の細菌汚染など現実の事例に適用され、その有効性が確認されている。これらの事例は本書でも解説されているが、このアプローチはこのほかにも大規模システムにおいて数多く試されてきており、従来の技術よりも効果的で、コストがかからず、使いやすいことがわかってきた。
このSTAMPに基づくアプローチは、安全性を後付けするのではなく、システム工学の初期段階から組み込むことにより、はるかに低いコストでより安全な世界の実現を目指すものである。
[原著]Engineering a Safer World: Systems Thinking Applied to Safety, The MIT Press, 2012.
内容説明
工学の世界は技術革命を経験したが、安全工学や信頼性工学に適用される基本的な工学的技法は、長年にわたってほとんど変化してこなかった。ナンシー・レブソンは、この画期的な本の中で、現代のシステム思考とシステム理論に基づいた安全への新しいアプローチを提案している。レブソンは、1950年代の航空宇宙技術者がシステム安全(MIL‐STD‐882)の概念の中で開拓したアイデアを再検討・アップデートし、因果関係の新しい拡張モデルSTAMP(システム理論に基づく事故モデルとプロセス)を提示している。そして、第一次湾岸戦争における米軍ブラックホークヘリコプターに対する味方への誤射、バイオックスのリコール、米海軍SUBSAFEプログラム、カナダの町の公共水道の細菌汚染など、現実世界の出来事に、この新しい手法を適用している。レブソンのアプローチは、安全工学の枠を超えて、大規模なあらゆる社会技術システムを「リエンジニアリング」し、安全性の向上とリスクを管理するための手法を提供するものである。このアプローチは航空や防衛を中心としたほとんどの産業で損失を防ぐために使われており、世界中に広がりつつある。
目次
第1部 基礎(なぜ今までと違うものが必要なのか?;伝統的な安全工学の基礎を疑う;システム理論と安全性の関係)
第2部 STAMP:システム理論に基づく事故モデル(因果関係に対するシステム理論的な見方;味方への誤射による事故)
第3部 STAMPの活用(STAMPを用いたより安全なシステムのエンジニアリングと運用;基本的な活動;STPA:新しいハザード分析手法;安全主導設計;システム工学への安全の統合 ほか)
著者等紹介
兼本茂[カネモトシゲル]
1976年大阪大学大学院工学研究科原子力工学専攻修了。現在、会津大学名誉教授、工学博士。株式会社東芝で原子力プラントの安全・異常診断技術などの研究開発に従事。2005年より会津大学コンピュータ理工学部教授を務め、機能安全やシステム安全などの研究に従事し、2017年に退官。その他、IPA/IoTシステム安全性向上ワーキンググループ主査、福島県廃炉安全監視県民会議議長などを務める
福島祐子[フクシマユウコ]
1985年東京外国語大学外国語学部卒業。現在、BIPROGY株式会社(旧日本ユニシス株式会社)総合技術研究所主席研究員。日本ユニシス株式会社に入社後、大規模システム開発プロセスのエンジニアリング、エンタープライズ・アーキテクチャ開発方法論の適用活動を経て、2015年総合技術研究所に異動。システムズエンジニアリング、MBSE、STAMP/STPAの適用研究に従事。STAMP関連の講演・講義・執筆多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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