出版社内容情報
本書は,日本語で読める初めての菌類生態学のテキストである。入門的,導入的な内容に絞り,初めて菌類の生態学に触れる読者が親しみながら学べる工夫がなされている。
本書は12章からなり,基礎生物学編,生態機能編,生態解析編の3部構成とした。基礎生物学編では,菌類学についての基礎的な内容をまとめた。続く生態機能編と生態解析編は,言うなれば菌類生態学の縦糸と横糸に相当する。生態機能編では,共生菌や分解菌などの生態機能群に注目して,その生態を紹介した。生態解析編では,どの生態機能群にも共通して適用可能な生態学の基礎的な事項と,近年めざましい進展を遂げている菌類生態学のフロンティア(メタゲノミクス,多様性解析,環境適応)とをバランスよくまとめた。
各章では,基本用語や中心概念などのキーワードは太字で目立つようにするとともに,図表を多く盛り込んだ。さらに深く勉強したい人のために,各章の内容に関連する日本語の文献をリスト化して,各章の末尾に入れた。さらに各章の末尾には,理解度チェッククイズを2?3問ずつ入れた。クイズに取り組むことで,菌類の生態学についての学習を主体的に深めることができる。また,興味や必要に応じて参照できるコラムを各章に入れた。
第1部 基礎生物学編
第1章 菌類はどのような生物か
1-1 菌類にまつわる用語
1-2 菌類とよばれる生物
1-3 菌類の種数
BOX1-1 生物学用語の補足説明(1)
BOX1-2 菌類の推定種数はどのように計算されているのか
BOX1-3 その名前,本当に菌類ですか?
第2章 菌類の系統と分類
2-1 生物界における菌類の位置づけ
2-2 菌類の高次分類群:基部にくる菌類
2-3 菌類の高次分類群:ディカリア
BOX2-1 不完全菌類とは何か
BOX2-2 菌類の命名規約に関する動向
第3章 菌糸の栄養成長
3-1 菌類の一生
3-2 菌糸の成長
3-3 基物と基質
3-4 菌糸による栄養の吸収と代謝
3-5 菌糸体の生存・成長戦略
BOX3-1 モジュラー生物としての菌糸体
第4章 菌類の生殖
4-1 菌類の有性生殖
4-2 菌類の無性生殖
4-3 胞子とは何か
4-4 胞子の形態と分散
BOX4-1 受講動機は何か?
第2部 生態機能編
第5章 内生菌
5-1 内生菌はどのような菌類か
5-2 内生菌の生態
5-3 内生菌の共生機能とその進化
5-4 内生菌が生態系に及ぼす波及効果
BOX5-1 生物学用語の補足説明(2)
BOX5-2 グラスエンドファイトの発見
BOX5-3 グラスエンドファイトの国際会議に参加して
第6章 菌根菌
6-1 菌根菌はどのような菌類か
6-2 菌根菌の共生機能
6-3 菌根菌の生活史戦略
6-4 菌根共生と生物多様性・生態系
BOX6-1 r-K 戦略
BOX6-2 真菌感とキノコミュニケーション
第7章 病原菌
7-1 病原菌の多様性
7-2 病原菌の生態
7-3 宿主個体への影響
7-4 病原菌と植物群落の動態
BOX7-1 島の生物地理学
BOX7-2 大規模植林地の病原菌見聞録
第8章 分解菌
8-1 分解菌の多様性
8-2 分解機能
8-3 生態遷移
8-4 分解プロセスにおける菌類の重要性
BOX8-1 落葉と菌類の生態学
第9章 地衣類
9-1 地衣類はどのような菌類か
9-2 地衣類の生活様式
9-3 相利共生系としての地衣類
9-4 生態系における地衣類
BOX9-1 学生はどの菌類をレポートテーマに選ぶのか
第3部 生態解析編
第10章 菌類の生態研究法
10-1 菌類生態研究の難しさ
10-2 菌類の直接観察・分離培養とバイオマスの定量
10-3 DNAを対象とした分子生物学的手法
BOX10-1 直接法による菌糸の定量
BOX10-2 DNAの構造
第11章 菌類の多様性解析法
11-1 菌類の多様性評価法
11-2 菌類多様性の多面的な評価
11-3 菌類の群集集合と環境要因・空間要因
BOX11-1 菌目線のススメ・菌目線でススメ
第12章 菌類と環境適応
12-1 菌類をとりまく環境
12-2 環境変動と菌類の適応
12-3 気候変化にともなう菌類の応答
12-4 標高にともなう菌類の応答
12-5 極地の菌類
BOX12-1 日本南極地域観測隊に参加して
大園 享司[オオソノ タカシ]
著・文・その他
目次
第1部 基礎生物学編(菌類はどのような生物か;菌類の系統と分類;菌糸の栄養成長;菌類の生殖)
第2部 生態機能編(内生菌;菌根菌;病原菌;分解菌;地衣類)
第3部 生態解析編(菌類の生態研究法;菌類の多様性解析法;菌類と環境適応)
著者等紹介
大園享司[オオソノタカシ]
2001年京都大学大学院農学研究科博士後期課程退学。同年京都大学大学院農学研究科助手(2007年より助教)、2008年京都大学生態学研究センター准教授などを経て、2016年より現職。同志社大学理工学部教授・博士(農学)。専攻は生態学・生物多様性科学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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