出版社内容情報
光を当てると色が変わるフォトクロミズムは,研究者でなくても,子供でも見てわかる現象である。フォトクロミズムの歴史は古く,これまで多くの研究者を魅了してきた。フォトクロミック分子は単に色変化を利用する研究にとどまらず,物質の様々な性質を光で制御するための光スイッチ分子として広く利用されており,材料化学の重要な研究基盤となっている。
フォトクロミズムを深く理解するためには,有機化学の知識だけでなく,量子化学,光化学,反応速度論の知識も必要となるため,初学者にはハードルが高く感じられるかも知れない。しかし,フォトクロミズムはそれだけ奥が深く,また応用分野も多岐に渡っているため,研究対象としては興味が尽きることのない格好なターゲットである。
フォトクロミズムに関する書物の多くは,これまでに開発されてきたフォトクロミック分子の反応機構や,応用例の解説に終始したものが多いが,本書ではフォトクロミズムを理解するために必要な基礎を,幅広い視点から多角的に解説することに努めた。フォトクロミック反応は光化学反応であるため,電子励起状態の理解が求められる。そのため,本書ではフォトクロミズムの概要,分子軌道法,電子励起状態,ポテンシャルエネルギー曲線の解説から入り,オレフィンのトランス‐シス光異性化反応,光開環/閉環反応,光解離反応の基礎理論,生物が利用しているフォトクロミック分子について解説した。
内容説明
フォトクロミズムの概要、分子軌道法、電子励起状態、ポテンシャルエネルギー曲線の解説から入り、オレフィンのトランス‐シス光異性化反応、光開環・閉環反応、光解離反応の基礎理論、生物が利用しているフォトクロミック分子について解説。前半部分のクライマックスともいえるポテンシャルエネルギー曲線については、ページ数を割いて、丁寧に説明している。
目次
第1章 フォトクロミズムとは
第2章 分子の電子状態
第3章 電子励起状態
第4章 電子励起状態を経由する光物理化学過程
第5章 オレフィンの光異性化
第6章 電子環状反応
第7章 結合解離反応
第8章 自然界におけるフォトクロミック分子
著者等紹介
阿部二朗[アベジロウ]
1991年早稲田大学大学院理工学研究科博士後期課程修了。現在、青山学院大学理工学部化学・生命科学科教授(工学博士)。専門は光化学・機能材料化学
武藤克也[ムトウカツヤ]
2015年青山学院大学大学院理工学研究科博士後期課程修了。現在、青山学院大学理工学部化学・生命科学科助教(博士(理学))。専門は光化学・機能材料化学
小林洋一[コバヤシヨウイチ]
2011年関西学院大学大学院理工学研究科博士課程後期課程修了。現在、立命館大学生命科学部応用化学科准教授(博士(理学))。専門は光化学・物理化学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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