出版社内容情報
これから研究をはじめたい人のための入門書
本書の特徴は、ファインマンダイアグラムの応用例として冷却原子気体のような比較的最近の話題を取り上げている点である。多くの量子多体系の教科書の序盤では、理想フェルミ気体や理想ボース気体が取り上げられているが、冷却原子気体では実際にこうした“理想的な系”を実現しうる。さらに、粒子間の相互作用が強くなったらこうした気体はどうなるのかという基本的な問いにも実験的に調べられるようになった。ファインマンダイアグラムは、この相互作用効果を取り扱うものである。
強相関系の量子多体問題を理解するのに、発現機構のコンセンサスが取れないほどに複雑な高温超伝導を例題として提示するのはやはり難しい。なるべくシンプルな系に立ち返るという意味で、冷却原子気体はまさに理想的な系であるといえる。物理学を学ぶのにあたり必ずしも人類が見つけた順に学ぶのが適切とは限らない。伝統的な良書が多い量子多体物理において、昨今の進展を反映した新しいスタイルの教科書があってもよいのでは、という思いを胸に本書を執筆した。(本書「まえがき」より)
【目次】
第1章 量子力学から場の量子論へ
1.1 シュレーディンガー方程式
1.2 場の量子論
演習問題
第2章 フェルミ気体とボース気体
2.1 絶対零度におけるフェルミ気体
2.2 絶対零度におけるボース気体
2.3 グランドカノニカル統計
2.4 有限温度におけるフェルミ気体
2.5 有限温度におけるボース気体
2.6 高温極限
演習問題
第3章 摂動論
3.1 密度行列の時間発展
3.2 S演算子を用いた定式化
3.3 基底状態における摂動展開
3.4 虚時間形式による摂動展開
3.5 ブロッホ-ド・ドミニシスの定理
3.6 1次摂動の具体例
演習問題
第4章 グリーン関数
4.1 絶対零度におけるグリーン関数
4.2 理想フェルミ気体のグリーン関数
4.3 スペクトル関数
4.4 遅延・先進グリーン関数
4.5 温度グリーン関数
4.6 松原形式
4.7 解析接続
4.8 温度グリーン関数のダイソン方程式
4.9 温度グリーン関数と熱力学量の関係
演習問題
第5章 ファインマンダイアグラムとその応用
5.1 熱力学ポテンシャルの摂動計算
5.2 松原表示におけるファインマンダイアグラム
5.3 温度グリーン関数の摂動計算
5.4 自己エネルギーの摂動計算
5.5 具体例:一様電子気体
演習問題
第6章 フェルミ原子気体
6.1 紫外発散と繰り込み
6.2 ノジエール-シュミット・リンク理論
6.3 BCS-BECクロスオーバー
6.4 フェルミ超流動と南部-ゴルコフ形式
演習問題
第7章 ボース原子気体
7.1 凝縮体の平均場
7.2 ボゴリューボフ理論
7.3 ダイソン-ベリアエフ方程式
演習問題
第8章 外場応答に関するファインマンダイアグラム
8.1 線形応答理論
8.2 応答関数とグリーン関数
8.3 密度応答
8.4 トンネル輸送
演習問題
第9章 有効相互作用
9.1 有効ハミルトニアンの定式化
9.2 有効相互作用
9.3 格子振動を媒介とした有効引力相互作用
9.4 RKKY相互作用
演習問題