基本法則から読み解く物理学最前線<br> 光誘起構造相転移―光が拓く新たな物質科学

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基本法則から読み解く物理学最前線
光誘起構造相転移―光が拓く新たな物質科学

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  • サイズ A5判/ページ数 107p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784320035317
  • NDC分類 428
  • Cコード C3342

出版社内容情報

 物質科学やその基礎を構成する物性物理学,物理化学は,豊かな物質的文化の果実を人類にもたらして来た。今日まで,人類よって創り出されて来た各種機能を持った材料の主要部分は,安定した物質の構造(化学結合や結晶構造)のもとにあることが基本とされてきた。従来型の物質を利用した各種デバイス設計では,この考え方が充分に有効な指導原理であった。が,その反面で,物質が秘めている時間とともに変化し揺らぐ構造とそれに伴う物性の協奏的な変化(協同現象)を見通して活用することは困難となるきらいがあった。この概念的,理念的限界を突破するべく,「変化」し「揺らいでいる」物質の構造とそれに伴うエネルギー状態の変化が本質的な役割を担う場である「非平衡状態」における物質の特性や,その発現機構解明を行おうとする,「非平衡物質科学」とも呼べる新規な物質科学領域の創出の試みが今まさに始まっている。特にこの非平衡状態を出現するきっかけとして物質に対する光励起を利用し,それによる物性変化の機構をナノスケール・オングストロームスケールの分解能を持った観測手法で理解し,制御しようとする試みが,主題である「光誘起構造相転移」現象の研究である。
 本書ではまず,なるべく式を使わずに,「光誘起相転移」という新しい概念を生み出した理論的,実験的背景を紹介する。それに続き新概念を具体化するために必要不可欠な,物質の具体例,新現象の観測手法の開発,観測結果について紹介する。この記述にあたっては,多くの関係者との連携,とりわけ物質開発,観測技術,その結果の理論解析という2人3脚ならぬ3人4脚での共同研究が立ち向かった困難と悪戦苦闘ぶりも含めて解説する。そして最後に,新観測技術による実験がもたらした「光誘起相転移」現象研究の新しい突破口とその最新データについても紹介する。学際的な新しい分野を切り開く,スリルに満ちた分野融合的研究の試みをお楽しみいただければ,著者としてこれに勝る喜びは無い。

第1章 はじめに

第2章 物質の中の自由度とその光制御 ― 光励起構造相転移に期待される特徴とその理論的背景 ―
2.1 光励起構造相転移に期待される特徴(現象面)
2.2 理論面から見た光誘起相転移現象の魅力
2.2.1 4つの挑戦的課題
2.2.2 課題(1) 協力的相互作用と励起状態の増殖の問題
2.2.3 課題(2) 物質内の(協力的)相互作用に起因する非線形応答の問題
2.2.4 課題(3) 揺らぎと再秩序化の問題
2.2.5 課題(4) 相変化ダイナミクスの問題

第3章 光誘起構造相転移研究登場に至る道 ― ポリマー結晶での双方向光相スイッチ現象の発見 ―
3.1 光誘起構造相転移探索が開始されるまでの背景
3.2 PDA における相転移現象の特徴
3.3 光誘起A-B 相転移とその温度依存性
3.4 光誘起A-B 相転移の特徴
3.5 強い電子 ― 格子相互作用系であるPDA 結晶の示す光誘起相転移現象のまとめ

第4章 なぜ今,光誘起構造相転移なのか? ― 新しい観測技術と物質開発の二人三脚 ―
4.1 光誘起相転移探索対象の進展
4.2 光誘起中性 ― イオン性(Neutral-Ionic: N-I) 相転移
4.2.1 テトラチアフルバレン ― クロラニル(TTF-CA) における中性 ― イオン性(N-I) 相転移
4.2.2 超短パルスレーザー励起による双方向光誘起N
4.2.3 TTF-CA結晶の光誘起相転移研究の最近の進展
4.3 スピンクロスオーバー(spin crossover) 錯体
4.3.1 [Fe(2-pic)3]Cl2 EtOH結晶のスピンクロスオーバー相転移の特徴
4.3.2 スピンクロスオーバー錯体における光誘起相転移のダイナミクス
4.3.3 スピンクロスオーバー錯体の光誘起相転移研究のその後の進展

第5章 高速レーザー,量子ビーム技術の発展がもたらした観測技術の大変革
5.1 光励起状態における電子{構造相関の観測に要求される性能
5.2 光励起状態における物質構造の観測方法(ポンプ{プローブ(pump and probe) 法)
5.3 光誘起中性 ― イオン性相転移に伴う結晶構造変化の観測例 ― 光誘起強誘電 ―
5.4 時間分解X 線散漫散乱(diffuse scattering) 観測を用いた光誘起中性 ― イオン性相転移過程の観測例
5.5 Mn酸化物系における「隠れた秩序状態」の発見

第6章 物理と化学,2人3脚,そして物質開発と観測技術,理論解析の3人4脚への道のり
6.1 有機電荷移動錯体にける光誘起相転移の登場
6.2 (EDO-TTF)2PF6結晶の特性と超高速光応答の発見
6.3 (EDO-TTF)2PF6結晶の光誘起相の光学的特色
6.4 (EDO-TTF)2PF6結晶の光誘起相変化過程に伴う結晶構造変化

第7章 おわりに

謝辞

参考文献

須藤 彰三[ストウ ショウゾウ]

岡 真[オカ マコト]

腰原 伸也[コシハラ シンヤ]

TADEUSZ M. LUTY[タデウシュ ミハエル ルーティー]

目次

第1章 はじめに
第2章 物質の中の自由度とその光制御―光励起構造相転移に期待される特徴とその理論的背景(光励起構造相転移に期待される特徴(現象面)
理論面から見た光誘起相転移現象の魅力)
第3章 光誘起構造相転移研究登場に至る道―ポリマー結晶での双方向光相スイッチ現象の発見(光誘起構造相転移探索が開始されるまでの背景;PDAにおける相転移現象の特徴;光誘起A‐B相転移とその温度依存性;光誘起A‐B相転移の特徴;強い電子‐格子相互作用系であるPDA結晶の示す光誘起相転移現象のまとめ)
第4章 なぜ今、光誘起構造相転移なのか?―新しい観測技術と物質開発の2人3脚(光誘起相転移探索対象の進展;光誘起中性‐イオン性(Neutral‐Ionic:N‐I)相転移
スピンクロスオーバー(spin crossover)錯体)
第5章 高速レーザー、量子ビーム技術の発展がもたらした観測技術の大変革(光励起状態における電子‐構造相関の観測に要求される性能;光励起状態における物質構造の観測方法(ポンプ‐プローブ(pump and probe)法)
光誘起中性‐イオン性相転移に伴う結晶構造変化の観測例―光誘起強誘電
時間分解X線散漫散乱(diffuse scattering)観測を用いた光誘起中性‐イオン性相転移過程の観測例
Mn酸化物系における「隠れた秩序状態」の発見)
第6章 物理と化学の2人3脚、そして物質開発と観測技術、理論解析の3人4脚への道のり(有機電荷移動錯体における光誘起相転移の登場;(EDO‐TTF)2PF6結晶の特性と超高速光応答の発見
(EDO‐TTF)2PF6結晶の光誘起相の光学的特色
(EDO‐TTF)2PF6結晶の特性と超高速光応答の発見
(EDO‐TTF)2PF6結晶の光誘起相相変化過程に伴う結晶構造変化)

著者等紹介

腰原伸也[コシハラシンヤ] [Luty,Tadeusz Michal]
1983年東京大学・理学部卒業。1986年同大・理学系研究科・博士課程中退。1986年東京大学・理学部助手。1991年理化学研究所・フォトダイナミクス研究センター研究員。1991年理学博士号取得(東京大学・理学部)。1993年東京工業大学助教授。2000年東京工業大学理工学研究科教授。2016年‐現在東京工業大学理学院教授。専門は半導体光物性、光誘起協力現象(光誘起相転移)。2014年フンボルト賞、文部科学大臣表彰(科学技術分野)

ルーティー,タデウシュ・ミハエル[ルーティー,タデウシュミハエル]
1965年ブロツワフ工科大化学科(ポーランド共和国)修士修了。1968年同大・PhD取得、同大・講師。1972年同大・助教。1974年同大・准教授。1980年同大・物理化学部門・教授。1987年同大・副学長。この間、ヤギロニアン大学、エディンバラ大、ナイメーヘン大、ネブラスカ大、リール大、レンヌ大、コロラド州立大、分子研の客員研究員、客員教授を歴任。2002年同大・学長。2013年同大・名誉教授。2016年‐現在ブロツワフ市アカデミックハブ・ヨーロッパアカデミックハブディレクター(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。