出版社内容情報
生物を「システム」として理解しようとするシステム生物学という学問が注目を浴びている。システムとして生物を理解しようとすると,生物と機械(たとえばラジオ)には多くの共通点が見えてくる。
本書ではこのようなシステム生物学の考え方が通常の生物学とどのように違い,面白く,そして今後の生物学の発展にどのように貢献できるのかについて,生物学を教育背景としながらシステム生物学の世界に飛び込みそして魅了された筆者の経験や考えをもとに,実例を挙げながら説明する。読み終わった後,「生物を理解するのにこのような考え方があるのか!」と少しでも思っていただけたなら幸いである。
1 通常の生物学とは?
1.1 通常の生物学
1.1.1 膨大な数の分子からなる生命現象
1.1.2 生命現象の理解にはDNAという設計図だけで十分か?
1.1.3 どうやって組み立て図のない機械(細胞)を理解する?
1.2 生物は数多くの部品からできている
1.2.1 RNAを網羅的に測定する
1.2.2 タンパク質の相互作用を網羅的に測定する
1.3 酵母の研究へ
1.3.1 酵母の研究で経験した成功と挫折
1.3.2 国際会議への初めての参加
2 システム生物学との出会い
2.1 システム生物学とは?
2.1.1 出会いは突然?
2.1.2 ネットワーク(配線)が生命現象を制御する?
2.1.3 システム生物学で何を明らかにしたいか?
2.1.4 異分野の研究者との議論は難しいが面白い!
2.2 分子の時間パターンによる制御って?
2.2.1 分子の時間パターンの重要性
2.2.2 分子のパターンを微分方程式で表現する
2.3 ネットワーク構造が生み出す特性
2.3.1 ネットワーク構造とは?
2.3.2 前向きな(フィードフォワード)制御
2.3.3 フィードバック制御
3 細胞とラジオのシステムは同じ!?
3.1 ホルモンによる生体応答の制御
3.1.1 ホルモンの分泌パターンには意味がある?
3.1.2 インスリンの血中パターン
3.1.3 食べ方によるダイエット効果はあるか?
3.2 インスリンの研究へ
3.2.1 どうやって研究を始めるか?
3.2.2 実験データを取得する
3.3 微分方程式モデルを作成する
3.3.1 良いモデルとは?
3.3.2 微分方程式モデルの作成に必要なもの
3.3.3 実験データを再現する微分方程式モデルの作成
3.4 インスリンパターンに注目した研究でわかったこと
3.4.1 培養細胞レベルではインスリンの波形によって下流の分子を選択的に制御できる
3.4.2 個体レベルでもインスリンの波形によって下流の分子を選択的に制御できる
4 細胞を丸ごと理解する
4.1 一部の部品からラジオの機能を理解できるか?
4.2 個別研究を持ち寄って全体を理解できるか?
4.3 網羅的なオームデータをつなげて細胞を理解する?
4.4 実験データを用いてネットワークを再構築する
4.4.1 インスリン応答のネットワークを再構築する
4.4.2 多階層にまたがるネットワークの推定からわかったこと
4.4.3 トランスオミクス解析が意味するもの
4.5 トランスオミクス解析の今後
5 システム生物学の将来
5.1 数式を用いて生物を表現・理解するのは必然の流れ
5.2 実験データが重要
5.3 統計的手法を用いた研究方法
5.4 システムの理解の次は予測と制御
5.5 生物学のための数学?
5.6 読者の皆さんへ
参考文献
謝 辞
時間パターンとネットワークの分子生物学(コーディネーター 巌佐 庸)
索 引
久保田 浩行[クボタ ヒロユキ]
著・文・その他
巌佐 庸[イワサ ヨウ]
解説
内容説明
自然科学の各分野におけるスペシャリストがコーディネーターとなり、「面白い」「重要」「役立つ」「知識が深まる」「最先端」をキーワードにテーマを選びました。第一線で研究に携わる著者が、自身の研究内容も交えつつ、それぞれのテーマを面白く、正確に、専門知識がなくとも読み進められるようにわかりやすく解説します。
目次
1 通常の生物学とは?(通常の生物学;生物は数多くの部品からできている;酵母の研究へ)
2 システム生物学との出会い(システム生物学とは?;分子の時間パターンによる制御って?;ネットワーク構造が生み出す特性)
3 細胞とラジオのシステムは同じ!?(ホルモンによる生体応答の制御;インスリンの研究へ;微分方程式モデルを作成する;インスリンパターンに注目した研究でわかったこと)
4 細胞を丸ごと理解する(一部の部品からラジオの機能を理解できるか?;個別研究を持ち寄って全体を理解できるか?;網羅的なオームデータをつなげて細胞を理解する?;実験データを用いてネットワークを再構築する)
5 システム生物学の将来(数式を用いて生物を表現・理解するのは必然の流れ;実験データが重要;統計的手法を用いた研究方法;システム理解の次は予測と制御;生物学のための数学?;読者の皆さんへ)
著者等紹介
久保田浩行[クボタヒロユキ]
2001年東京大学理学系研究科生物化学専攻博士課程修了。現在、九州大学生体防御医学研究所附属トランスオミクス医学研究センター統合オミクス分野教授、博士(理学)。専門、システム生物学
巌佐庸[イワサヨウ]
1980年京都大学大学院理学研究科博士課程修了。現在、関西学院大学理工学部教授、理学博士。専門、数理生物学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。