出版社内容情報
私たちの美意識の基礎には進化的な基盤がある。本書は,ヒトの美的感覚を行動生物学の視点からとらえた本邦初の書籍である。ヒトの美や芸術の特徴を動物との比較によって明らかにすることで,ヒトの美の特殊性に光をあてる。
筆者はこれまで,サカナから鳥類,哺乳類まで多様な動物を使って数々の動物実験を行ってきた。それらの実験で得られたデータをもとに,人間の作り出した芸術作品を動物がどのように認知し,どのような場合に好むのかを解説する。また,動物実験のみならず,実証的美学研究の歴史と現在の研究動向,脳画像を駆使して美を捉える神経美学についても取り上げ,さまざまな側面から美の起源を探る。
この本は悪く言えば「興味本位」,よくいえば「真理探究型」の研究を扱っている。「役に立つ」研究ばかりでなく真理探究型の研究の重要性,面白さを生き生きと伝えながら,美の起源として進化を考える立場の最前線をわかりやすく紹介する。
1 経験科学としての美学の成り立ち
1.1 美学のはじまり
1.2 実験美学知覚として測定可能な美
1.3 新実験美学―行動に表れる快としての美
1.4 その後の発展
2 美の進化的起源
2.1 普遍的な美はあるのか
2.2 風景の好みと環境の自然選択
2.3 性選択とメスの審美眼ダーウィンの主張
2.4 カモフラージュ説ウォーレスの主張
2.5 美はなにかの信号なのか
2.6 「突っ走る」シュールリアリズム
2.7 メスは合理的な判断をするのか
2.8 母子関係と美
2.9 性選択としての美の意味するもの
3 美の神経科学
3.1 脳の中の快感
3.2 美を感じる脳
3.3 すべての美は同じものか
3.4 どのような変化が起きるのか
3.5 脳損傷の不思議な効果逆説的機能促進
3.6 これからの神経美学
4 動物たちの芸術的活動
4.1 美しい鳥の巣
4.2 ニワシドリはなんのために巣をつくるか
4.3 鳥の歌は音楽か
4.4 動物の芸術的行動と人間の芸術の違い
5 動物に芸術を教えられるか
5.1 チンパンジーに絵を描かせる
5.2 ゾウに絵を描かせる
5.3 音楽をつくるか
5.4 動物芸術の限界
6 動物は人間の芸術を見分けられるか
6.1 漫画を見分けられるか
6.2 画風を見分けられるか
6.3 上手下手がわかるか
6.4 音楽の弁別
6.5 どのような動物が絵画や音楽を弁別できるか
7 動物はヒトの芸術を楽しむか
7.1 絵画の強化効果
7.2 音楽で快感を得るか
7.3 動物のための音楽を
7.4 感性強化としての美に種を超えた普遍性はあるか
8 洞窟絵画の謎
8.1 洞窟絵画
8.2 なにが描かれているのか
8.3 岩 絵
8.4 ボディ・ペインティングから絵画へ
8.5 アートに先立つ美意識はあったのか
文 献
あとがき
美の心理学(コーディネーター 長谷川寿一)
索 引
渡辺 茂[ワタナベ シゲル]
長谷川 寿一[ハセガワ トシカズ]
目次
1 経験科学としての美学の成り立ち
2 美の進化的起源
3 美の神経科学
4 動物たちの芸術的活動
5 動物に芸術を教えられるか
6 動物はヒトの芸術を見分けられるか
7 動物はヒトの芸術を楽しむか
8 洞窟絵画の謎
著者等紹介
渡辺茂[ワタナベシゲル]
1975年慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程修了。現在、慶應義塾大学名誉教授。文学博士。専門は実験心理学、神経科学、比較認知科学
長谷川寿一[ハセガワトシカズ]
1984年東京大学大学院人文科学研究科心理学専攻博士課程単位取得退学。現在、東京大学大学院総合文化研究科教授。文学博士。専門は人間行動進化学、行動生態学、進化心理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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