出版社内容情報
食材としても,「謎の生物」としても,注目を集めるニホンウナギ。2013年には環境省が,2014年にはIUCN(国際自然保護連合)が,相次いで本種を絶滅危惧種に指定した今,保全と持続的利用のための対策が急務とされる。本書は,最新の知見に基づき,ニホンウナギの保全と持続的利用を進めるための,具体的な指針を提示する。
本書は,第1章から第3章および終章の,4つの章から構成される。第1章では,保全と持続的利用を考えるうえで必要とされる,必要最低限のニホンウナギの生態の特徴を簡潔にまとめた。第2章では,個体数減少の状況からその理由まで,ニホンウナギの現状をまとめている。第3章では,放流など現在行われている保全と持続的利用のための対策を整理し,それに基づいて本種の生態に適した保全と持続的利用の方策を,漁業管理,河川と沿岸域の環境,社会における情報共有と合意形成の視点からまとめている。終章では,第1?3章およびコラムに基づき,日本社会の実情も勘案して,保全と持続的利用を実現するための具体的な方策「ニホンウナギの保全と持続的利用のための11の提言」を提案している。
ニホンウナギ減少の問題は,伝統的食文化の問題であると同時に,環境保全と開発のバランス,資源の持続的利用という,より大きな問題をその背景としている。本書は,この問題を大局から俯瞰し,問題解決というゴールへ適切に近づくための羅針盤である。
第1章 ニホンウナギの生態
1.1 ニホンウナギの進化的位置
1.2 ニホンウナギの生活史
1.3 ニホンウナギの個体群構造
第2章 ニホンウナギの現状
2.1 個体群の危機
2.2 危機の要因(1)―海洋環境の変動
2.3 危機の要因(2)―過剰な漁獲
2.4 危機の要因(3)―成育場の環境変化
2.5 そのほかのウナギ属魚類の危機
第3章 ニホンウナギの保全策
3.1 なぜウナギを守るのか
3.2 現在の対策―放流
3.3 望ましい対策―漁業管理
3.4 持続可能な利用のための対策―成育場の環境回復
3.5 これからの保全
終章 ニホンウナギの保全と持続的利用のための11の提言
解説 ウナギに挑む保全生態学(コーディネーター 鷲谷いづみ)
海部 健三[カイフ ケンゾウ]
鷲谷 いづみ[ワシタニ イヅミ]
目次
1 ニホンウナギの生態(ニホンウナギの進化的位置;ニホンウナギの生活史;ニホンウナギの個体群構造)
2 ニホンウナギの現状(個体群の危機;危機の要因(1)―海洋環境の変動
危機の要因(2)―過剰な漁獲
危機の要因(3)―成育場の環境変化
そのほかのウナギ属魚類の危機)
3 ニホンウナギの保全策(なぜウナギを守るのか;現在の対策―放流;望ましい対策―漁業管理;持続可能な利用のための対策―成育場の環境回復;これからの保全)
終 ニホンウナギの保全と持続的利用のための11の提言
ウナギに挑む保全生態学
著者等紹介
海部健三[カイフケンゾウ]
中央大学法学部准教授・中央大学研究開発機構ウナギ保全研究ユニットリーダー。1973年東京都生まれ。1998年に一橋大学社会学部を卒業後、社会人生活を経て2011年に東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程を修了し、博士(農学)の学位を取得。東京大学大学院農学生命科学研究科特任助教、中央大学法学部助教を経て、2016年より現職。専門は保全生態学。2013年に国際自然保護連合(IUCN)ウナギ属魚類専門家サブグループとして、ニホンウナギを含むウナギ属魚類の評価に参加
鷲谷いづみ[ワシタニイズミ]
東京大学名誉教授、中央大学理工学部人間総合理工学科教授。1950年東京都生まれ。1972年に東京大学理学部を卒業、1978年に東京大学大学院理学系研究科博士課程を修了し、理学博士の学位を取得。筑波大学生物科学系講師、助教授、東京大学大学院農学生命科学研究科教授を経て、2015年より現職。専門は保全生態学。みどりの学術賞、日本生態学会功労賞などを受賞。里山や水辺の生物多様性の保全と再生などに関する幅広い研究や普及活動を行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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