出版社内容情報
中国でもっともらしく語られる日本人論にも、
また日本でもてはやされる中国人論にも、
違和感ばかりを覚えてしまう――
上海の大学で日本文学と日本文化を教える“外教″である著者が、コロナ禍の上海で数多の本を読みながら、「上海について、上海を通して、上海をきっかけにして」縦横無尽にめぐらした思考の軌跡。
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《目次》
1 図書館の工房
2 本のために読者を、読者のために本を
3 「礼儀」が田舎にやって来た
4 あの日あの時サンパウロで
5 偉大さへの自信は火薬とともに
6 ディープなキッスには批評が宿る
7 マラドーナの横にフランチェスコリがいたのなら
8 ゴールキーパーだった詩人の「きらめくような幸運」
9 暴君と独裁君主
10 信じる前に考えるようになった
11 洗濯物は何を語るか
12 紅い遺伝子
13 すべての作家は「幹部」である
14 「存在」と「生命」の間で
15 “病衣”を着て“病友”に囲まれて
16 烤屁股、泡屁股(カオピーグー、パオピーグー)
17 「一帯一路」と麦わら帽子
18 十月、いまだ実現されていない世紀
19 ごま味噌腸粉と広東オペラ
20 向前一小歩、文明一大歩
21 風と波と上海と
22 もうひとつのオン・ザ・ロード
23 紅いピラミッド
【著者】夏申(かしん)
2018年から上海の大学で日本文学・日本文化を教える。夏申は筆名。
「私は中国とは無縁の人間だった。中国について専門の勉強もしたことはないし、中国語を専門的に学んだこともない。日本のパスポートを持ち、三代さかのぼっても中国とはまったく関係なく、日本で日本語の教育を受けただけの人間だ。留学経験は一度たりともなく、あるのは数度の海外旅行のみ。中国語は四十半ばを過ぎてから学びはじめただけである」(本文より)