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出版社内容情報
「チャペックの再来」による父と息子の物語
二人の息子を強制収容所へ行かせることになった父親が、最後のご馳走のため、禁じられている鹿を狩りに行く表題作はじめ、家族のつながりを描いた連作短篇集。ユダヤ系である自分の家族を愛情とユーモアあふれる文章で描き、「カレル・チャペックの再来」と称賛されながら、パヴェルは本書刊行後に急死。だが、その人気は現在でも衰えず、戦後チェコ文学のベストセラーの一つとなり、現在でも愛蔵版が作られつづけている。
内容説明
「美しい鹿の死」―それは、森の動物たちが集まる泉の名前。ユダヤ人の父親は、強制収容所に送られる息子のために、みつかれば銃殺されるのを覚悟で、犬のホランを連れて、鹿の密猟に出かける。ナチスが来るまでは、家族でキャンプをし、釣りを楽しんだ、プラハ郊外の美しい川辺に、身を横たえながら…。「チャペックの再来」待望の邦訳。破天荒だが憎めない父親と、暖かな家族の絆を描いた、戦後チェコ文学のベストセラー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
101
あまり読む機会のないチェコスロヴァキアの文学。訳者によるとこの作品が発表された時は大評判になり、カレル・チャペックの再来と言われたそうだ。物を人に売り込む天才的な才能を持った父親を中心に据えて描かれた家族の物語で、ユーモアとペーソスに満ちている。ナチスの侵略が家族の生活に影を落とすが、それをものともしないで彼らは生き抜いていく。どんな時代どんな国であっても、庶民は政治に翻弄されて、苦しめられる。たとえそうであっても、尊厳を持ち、ユーモアを武器にして生きていけることを教えてくれる物語だ。2017/12/02
葵
16
装丁100点!タイトル100点!内容100点!300てーん!戦時下のチェコスロヴァキアが舞台だから常に緊張を孕ますこともできたのに、笑いと粋さを全面に押し出してくれることで救われる。父親が真剣であればあるほど笑っちゃうのよ。余華から過激さや毒気を抜いたような感じで(こっちのが古いけど)、思わず笑みが溢れてしまうような温かで優しいユニークさが心地よかった。父親や自身の人生観をかけた深い葛藤に陥らせず、いかに軽くするかということに拘って書き上げたのかなあ。読んで良かったなあ。しかし持ってる本で一番装丁が好き。2023/03/06
きゅー
13
作者オタ・パヴェルの父を中心に、その家族を描いた連作短篇集。読み始めは、父親のしょうもなさに苦笑していたのだが、時代が第二次世界大戦へと向かうにつれ、そのバカバカしさはどこかへ消えてしまう。見つかれば殺されると分かっていても、収容所へ旅立つ息子のためにステーキを工面しようとする父の姿には目頭が熱くなる。この作品はチェコ本国でかなりの好評を博したとのことだが、それも納得できる。ユーモラスだけど、真剣な物語だった。2012/04/12
きらら@SR道東民
10
ユダヤ人の父親と家族を描いた物語。息子の目線で時にはユーモアも交えて淡々と綴られている。破天荒だが憎めない父親、「美しい鹿の死」それは森の動物達が集まる泉の名前。強制収容所に送られる息子のために、見つかれば殺されるのを覚悟で鹿の密猟に出かけ肉を食べさせようとする。悲惨な戦争へのやるせない怒りが静かに伝わってきます。2014/03/26
ミス レイン
6
息子からみた、しょうもないというか人間臭いおやじの連作集。牧歌的な始まりから強制収容所連行や人種差別など暗くて重い影が隣り合わせの生活のであるけれど、セールスが天才的だったり、それでも失敗したり、だまされたり、強制収容所へ行く息子のために密漁したりしているおやじ。飼っていた犬猫まで処刑されたり、おやじ自身も強制収容所へ送られたり、ユダヤ人であるがための苦しみも綴られているのだけど、おやじはずっと真剣なのでじわじわと面白い。相反する感情が一緒に湧いてくるので複雑な読後感。単純に面白いと言っていいものか悩む。2016/11/30