出版社内容情報
癌で死にゆく母を看取るボーヴォワールの苦悩と愛情。
「つらい仕事である。死ぬことは。
生をこんなに強く愛しているときは」
突然倒れた母親の病名は癌だった――ボーヴォワールの母親の入院からその死にいたる,4週間の出来事を書きつづった身辺記録。作家としての厳しい眼差しと娘としての優しい気持ちとで,「人にとって死とはなにか」「つまりは生とはなにか」を問うている。「母の死」という普遍的な問題をめぐる,ボーヴォワールならではの厳しさと美しさが結晶した文章である。
「私の中で私とちがう誰かが泣いている。私はサルトルに、今朝見た通りの母の
ことを、私がそこに読みとったいっさいのことを、話した――母の死の孤独、母
の生の孤独――口に出して言おうとしない孤独感」(本文より)
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シモーヌ・ド・ボーヴォワール
1908年生まれ。パリ大学に学び、哲学教師となり、1943年に最初の小説『招かれ
た女』、44年にエッセー『ピュリウスとシネアス』を刊行。以後サルトルととも
に実存主義作家の代表として、その機関誌Les Temps Modernesで活躍、49年に
『第二の性』で注目をあび、『他人の血』『人はすべて死す』などの小説のほか、
評論や旅行記などの精力的な仕事を続け、54年の小説『レ・マンダラン』でゴン
クール賞を受けた。以後、中国紀行『長い歩み』、自叙伝『娘時代』『女ざかり』
『或る戦後』『決算のとき』(以上、紀伊國屋書店)、『老い』(人文書院)な
どの大作を発表、現代フランス文壇の第一線で活躍を続けた。1986年逝去。
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内容説明
1968年秋、サルトルと共にローマに滞在していたボーヴォワールのもとに、母が入院したとの連絡が入った。70歳になる母の病名は癌。癌を何よりも恐れていた母に、病名を告知しないまま、4週間にわたるボーヴォワールの看病が始まる。近代的な病院のなかで、物のように扱われる患者、苦痛をともなう延命治療を主張する医師との対立、治療法への疑問などを抱えながら「死にゆく母に何ができるのか」「人にとって死とは何か」に悩むボーヴォワール。娘としての愛情と作家としての厳しさとが生み出す葛藤が、美しい結晶となった文章で語られる。
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