出版社内容情報
かつてマリノウスキーは文化相対主義の立場から,フロイトのエディプス・コンプレックス理論の限界を主張した。エディプス状況は母系社会には存在しない,というのだ。本書は,この「定説」への果敢な挑戦であり,マリノウスキー自身が提出したデータを徹底的に再検討し,むしろ逆の結論へ導いてゆく。人類学と精神分析の境界で「家族」の本質を問うた一冊。
内容説明
男の子は、母親に性的な愛着をいだき、父親に僧しみをいだく―フロイトのいう、エディプス・コンプレックス。これはフロイト理論の中心概念であり、人間の人格形成の秘密を探る20世紀の知的営為のなかで、大きな役割を果たしてきた。だが人類学者マリノウスキーは、文化相対主義の立場から、この概念に限界のあることを主張した。エディプス・コンプレックスは、近代世欧の父権制家族による産物であり、その証拠に、母系社会でいあるトロブリアンド諸島にはこうした心性はない、というのである。本書は、このマリノウスキーの主張を徹底的に再検討する試みである。
目次
第1章 問題提紀
第2章 トロブリアンドの母系コンプレックス―その評価
第3章 トロブリアンドのエディプス・コンプレックス―仮説
第4章 トロブリアンドにおけるエディプス仮説を検証する―それが個人に発生する場合の決定因子の予見と検証
第5章 トロブリアンドにおけるエディプス仮説を検証する―エディプスに伴う心理的特徴の予見と検証
第6章 エディプス・コンプレックスは普遍的か?