出版社内容情報
現代生活の重苦しい呪縛を解き放ち,「生命の喜び」を回復する道はないか。日常生活の周りにひそむ実体論的思考法に痛撃を与え,ここに丸山流文化論・人間論をやさしいことばで語りかける。とりわけ,ソシュールの「狂気」の原因と目されるアナグラムに挑み,意識の深層におけるコトバの姿を取り出すところは圧巻。「キー・ワードの解説」付き。
内容説明
「現代」生活を送る人間は、貨幣や商品や、様々な欲望対象によってますますがんじがらめに呪縛され、また氾濫する情報や諸観念によって硬直化した精神生活を強いられているかにみえる。こうした状況にあって、私たちは「生命の喜び」をいかにして回復できるのだろうか。『文化のフェティシズム』を出発点に、いまや独自の思想を形成し始めた著者は、ここに身近な日常生活の周りにひそむ惰性化し硬直化した様々な〈実体論の罠〉を抉り出し、流動化した生命の動きを回復するための方向性を示す。さらに最終章で、ソシュールの謎の沈黙と「狂気」の原因と目されるアナグラムに挑み、意識の深層におけるコトバの姿を取り出すところは圧巻である。やさしいことばで語りかけるように、著者の文化論、人間論、生命論を説いている。
目次
1 フェティシズムと快楽
2〈近代〉批判のメリットと限界
3 コトバと文化
4 アナグラムと無意識
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いきもの
3
比較的読みやすい哲学書。ソシュールを中心に言葉と文化、物について。身体とコトバ(文化)の二項対立ではないその先への「即色是空、空即是色」。間テクスト性と固定化されないコトバ、文化への流動的な欲。2021/06/26
PukaPuka
1
講演録なので比較的読みやすい。文化の文化たる無駄、過剰物が喜びの源として発生しているのが、広い意味でのフェティシズムという。となると、芸術作品はフェティシズム的なものと、作らざるを得ないような状況で生み出された人は非フェティシズム的なものがあると思う。もちろん後者もフェティッシュへ転化することで救われるわけだけれど。身分け、言分け、はイマイチわからない。2020年の一冊目としてはよい選択だった。2020/01/06
水野洸也
0
構造化され、硬直化した「コード」としての狭いフェティシズムではなく、それが単なる関係性であり、これというのが関係性の物化した「共同幻想」としての姿であるということを見極め、それを肯定してみせた後で、つまり自分がそのような文化の中で生きていることを認めた後で、文化の過剰物、流動的な文化としての広いフェティシズム、あらゆる無根拠性を楽しむべきだ、というのが前半部分の主張。我々は〈身分け構造〉と〈言分け構造〉のうちに生きており、このうちの後者によって、後天的に「不自然」な文化を獲得するのだ、ということらしい。2016/11/19
非出来
0
☆☆☆ 何度目かの読了。良書にしてわかりやすい。ソシュールから丸山哲学への変遷が書かれている。読むことは生きること。本を読む楽しさは、ここに理論づけられている、のかな? 2012/02/18