出版社内容情報
「木村の中立説は,ダーウィン自身による自然淘汰説の発表以来,進化理論において最も重要な発表であろう。」
――スティーブン・J. グールド
〈淘汰説対中立説〉の長年に渡る進化論争に決着をつけるべく精魂を傾けた力作で,木村の〈中立説〉の全貌を初めて明快に説いた待望の著作!
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著者は1968年に<中立説>を提唱した。
その後、今日にいたるまで、分子レベルでの進化の機構をめぐって
<淘汰説か中立説か>の進化論争が世界を舞台に連綿として展開されて来たのである。
ダーウィン進化論を批判する亜流の議論は後をたたないが、
世界的レベルでこれほど長期に渡った進化論争も珍しい。
そして、著者は、その進化論争に決着をつけるべく、精魂を傾けてこの本を著した。
これまで何かとそのことばだけが飛びかっていた感じの、
木村の<中立説>がついに単行書の形にまとめられ、
その全体像を明らかにした。
数学が入っていて少々難しいとお感じの読者もあろうが、
この本はすでに欧米で高い評価を得ており、その重要性は大きい。
間違いなく、生物学関係の学生と研究者には必携の書である。
また、進化理論に関心をお持ちの一般の読者の方も
この本に是非とも挑戦していただきたいものである。
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1 ラマルクから集団遺伝学まで
2 進化総合説の過剰生長と中立説の提唱
2.1 正統的な見解としての総合説の形成
2.2 中立突然変異浮動仮説の提唱
3 進化理念としての中立突然変異浮動仮説
3.1 自然淘汰の上で同等な対立遺伝子に働く偶然の作用
3.2 集団の大きさが有限なために起こる遺伝子浮動
3.3 集団の有効な大きさ
3.4 中立な突然変異とほぼ中立な突然変異
3.5 突然変異置換の集団動力学
3.6 いくつかの誤解と批判について
4 表現型進化の速度と分子進化の速度との対比
4.1 表現型進化の特徴
4.2 分子レベルの進化速度
5 分子進化の特徴
6 自然淘汰の定義、種類および作用
6.1 自然淘汰の意味
6.2 量的形質に働く表現型淘汰
6.3 遺伝子型淘汰
6.4 自然淘汰についてのその他の用語と概念
6.5 遺伝的荷重
6.6 適応過程に関するフィッシャーのモデル
6.7 表現型淘汰と遺伝子型淘汰との関係
6.8 安定化淘汰の下での有限集団中の突然変異遺伝子の行動
7 分子構造、淘汰的制約および進化速度
7.1 突然変異置換の保守性
7.2 分子構造と淘汰的制約
7.3 同義的置換とその他の表現されない置換
7.4 偽遺伝子の速い進化
7.5 同義コドンの「不均一」使用
8 分子レベルの集団遺伝学
8.1 なぜ確率的扱いが必要か
8.2 遺伝子突然変異のモデル
8.3 有限集団における中立突然変異遺伝子の年齢
8.4 遺伝子頻度変化の見本過程にそったある量の和
8.5 ステップ状突然変異モデル
8.6 無限座位モデル
8.7 有効中立突然変異のモデル
8.8 遺伝的距離
9 分子レベルにおける遺伝的変異の保有
9.1 問題、事実そして中立説による解決
9.2 淘汰に対する中立性の実験的検証
9.3 淘汰に対する中立性の統計的検証
9.4 対立仮説のいくつかについて
9.5 分子の構造と機能的制約が遺伝的変異に及ぼす効果
9.6 まれな対立遺伝子の頻度分布
9.7 地理的構造をもつ集団における中立遺伝子
10 要約と結論
内容説明
本書は、分子レベルでの進化的変化、すなわち遺伝物質それ自身の変化を引き起す主な要因は正のダーウィン淘汰ではなく、淘汰に中立なまたはほとんど中立な突然変異遺伝子の偶然的固定であるということを科学界に確信させるために書かれたものである。
目次
1 ラマルクから集団遺伝学まで
2 進化総合説の過剰生長と中立説の提唱
3 進化理念としての中立突然変異浮動仮説
4 表現型進化の速度と分子進化の速度との対比
5 分子進化の特徴
6 自然淘汰の定義、種類および作用
7 分子構造、淘汰的制約および進化速度
8 分子レベルの集団遺伝学
9 分子レベルにおける遺伝的変異の保有