内容説明
近代ヨーロッパ文化との接触は未開社会に何をもたらしたか?南太平洋メラネシア全域で展開された大規模な宗教運動と、それによる社会の変化を幅広く考察する。
目次
第1章 フィージィーのトゥカ運動
第2章 千年王国主義と社会変化
第3章 ニューギニアにおける初期の宗教運動
第4章 ヴァイララ狂信
第5章 カーゴ・カルト運動の拡大と発展
第6章 運動の継続―ブカ島の場合
第7章 日本軍の到来
第8章 ニューヘブリディーズ諸島の宗教運動
第9章 千年王国から政治へ
第10章 転換期
結論
付録
著者等紹介
ワースレイ,ピーター[ワースレイ,ピーター][Worsley,Peter]
1924年英国・チェスター生まれ。カンタベリー大学卒業。マンチェスター大学で修士号(経済学・社会人類学)、オーストラリア国立大学で博士号(社会人類学)を取得。1964年よりマンチェスター大学社会学部教授を務める。サー・ジョージ・ウィリアムズ大学、ミシガン州立大学、ブランディーズ大学の客員教授、英国社会学会会長などを歴任
吉田正紀[ヨシダマサノリ]
1945年生まれ。立教大学経済学部卒業。米国イリノイ大学大学院ウルバナ・シャンペーン博士課程修了(Ph.D.文化人類学)。日本大学国際関係学部国際教養学科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
9
第一次世界大戦前から第二次世界大戦後までのメラネシアで起きたカーゴ・カルトの変遷を辿った一冊。運動の発生の原点は西洋社会とキリスト教に出会った衝撃であり、キリスト教を独自の解釈で読み解いていく部分が興味深かった。反白人や現世での立場が入れ替わるといった教義から、やっぱ根底にあるのはルサンチマンであるな。また運動が初期の単なる宗教活動から、だんだんと政治活動へと移っていく流れも興味深い。これ一冊読んでおけばカーゴ・カルトの何たるかは理解できますね。2012/06/10
てれまこし
4
メラネシアの千年王国運動はキリスト教の影響を受けている。だが、反白人、反教会運動の性格も有しており、土着の信仰と融合している。千年王国運動は単純な過去への回帰ではなく、伝統的な生活が崩壊の危機に面したときに現れる。伝統に頼りながらも、伝統を否定するものでもある。ホブズボーム同様、世俗的運動との区別が強調されているが、自分には世俗の革命思想にも同様の神話性を見いだすことは難しくないように思える。日本などでは理想化された西洋社会が一種のユートピア像を提供したのだが、カーゴ・カルトに近い心性ではないかと思う。2019/11/02
★★★★★
1
大航海時代以来、西欧列強、大日本帝国の進出、戦後はアメリカによる信託統治と、強力な異文化による支配を受け続けてきたメラネシアの島々。かの地域におけるユートピア思想、特にキリスト教から千年王国の概念を領有して成立した、西洋的な富を満載した船に乗った祖先が戻ってくると同時に白人支配者も一掃されるとするカーゴカルト運動について、歴史人類学的に比較検討する本です。異文化接触における理不尽さに対して「合理的な」解釈を下そうとする、弱い側の文化による抵抗の相は、グローバル化の進む現在においても示唆を得られましょう。2009/10/10
deadman
0
カーゴ・カルト研究の決定版(とされる)2012/03/17
MIRACLE
0
3点(5点)。メラネシアで二十世紀前半に発生した千年王国運動について、体系的にまとめた本。千年王国運動とは人々が超自然的な至福の時期の到来を期待し、その準備を試みた運動だ。運動の概要をつかむには便利だ。しかし個別の運動についての記述が十分でないのが、残念。2012/02/25
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- 和書
- 定年漂流 小学館文庫