出版社内容情報
社会哲学の立場からフロイトの源流にさかのぼって精神分析を一つの思想として全面的に検討し,文化の担い手であるエロスの復興こそが人間解放の条件であるとする。しかもそれは,社会構造の根本的な変革によってのみ可能である,という新しい左翼の旗手,マルクーゼの出発の書。
〈内容〉抑圧された個人の起源/抑圧的な文明の起源/現実原則の彼方へ……
感想・レビュー
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ぷほは
2
フロイトをフロムのようにパーソナリティ分析の観点から社会科学化するのではなく、むしろ徹底的に文明論として読むことによって、却って社会学的な議論に接合させる、というアクロバティックな議論を展開している、六十年代当時新左翼のバイブルの一つ。これを読めば吉本隆明の『共同幻想論』まではあと一歩といったところだろう。むろん眉唾で読む必要があるが、翻訳が努めてわかりやすくしようと苦心しているのが伝わる文章で、当時のアメリカ大衆社会論とフランクフルト学派の微妙ならざる日本受容の一端が伺える。シェーラーとか参照してるし。2016/04/11