出版社内容情報
ホメロスが吟醸し、人々の心を今もとらえ続ける西欧文学の頂点「イリアス」と「オデッセイア」。その豊穣な世界を伝える名著。
内容説明
本書では、吟遊詩人ホメロスの生涯に始まり、その叙事詩『イリアス』『オデュッセイア』の成立過程、またその朗唱や伝承の事情、更には暗黒時代のギリシア社会の構成から、風俗・信仰に至るまでが、著者の豊富な学識に支えられて、明快平易に語られている。
目次
第1章 ホメロスの背景(歴史的背景;吟遊詩人としてのホメロス;口承詩の筆記と原典の成立)
第2章 『イリアス』について(アキレウスの怒り;アガメムノンの権力;アキレウスの友情 ほか)
第3章 『オデュッセイア』について(戦後十年目の世界;英雄叙事詩と民話;オデュッセウスの冒険談 ほか)
第4章 古典としての価値
著者等紹介
藤縄謙三[フジナワケンゾウ]
1929‐2000。1953年京都大学文学部史学科卒業。京都大学文学部助教授、教授を経て同大学名誉教授に。主に、ホメロスからエウリピデスまでの古典ギリシアの思想史及び社会史を研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かな
5
「ホメロスの世界は、時間的にも空間的にも遠い世界です。しかし、もしも私たちが正義とか美とかを素直に愛し、その見地から物事を評価するようになりさえすれば、時や所の距離は問題ではなくなるでしょう。そしてホメロスの世界は、私たちの身近にあるべき世界となるかも知れません。」という「はじめに」の著者のことばどおり、衒いなくすっと感性に馴染む解説だった。強烈な個性の英雄や女性たちが活躍するイリアス、読んでみたくなった。2023/03/05
サロメ
5
ホメロスの作品(イリアスとオデュッセウス)に惚れた人が、その魅力を素人にも伝えようと懸命に努力してくれている。その思いが伝わってきて気持ちがいい。異文化の世界の超古典作品でありながら、全く失われない魅力。その魅力はどこからきているのか。 自分自身、イリアスは大好きだけど、人にその魅力を伝えるのが難しい。この本を読んで気づくことが多かった。2012/11/24
たかひろ
2
「イリアス」と「オデュッセイア」の物語の概説と魅力をわかりやすく伝えてくれる本。ギリシアの神々の考え方とか、紀元前8世紀くらいの市民の様子や思想、そしてという英雄時代なによりも栄誉を大事にする世界でも稀に見るような時代のことが分かりやすく書いてあって面白かった。2025/02/12
in medio tutissimus ibis.
2
物語の魅力は概ね登場人物の欠点によって決定されるのだけれど、そこのところを紹介してくれる解説と言うのが割に少ない。古典となるとさらに少なくなる。世間に一定の評価があったり、あるいはそういうものを打ち出そうというときに、欠点を論うのはいかがなものかと思うのは人情かも知れないが、それでは予想を裏切り興味を引くことはできない。アキレウスはマザコンだし、ヘクトールも名誉狂いだし、ヘレネはいい男が居なくて酒浸りだし、オデュッセウスは漂白の果てに円熟してなお猜疑心の虜だ。そこまで言われると逆に読みたくなるのが人情だ。2019/05/31
Masashi Ohno
0
分かりやすく深みのある解説。2017/08/01