内容説明
政治家・池田勇人、エコノミスト・下村治、宏池会事務局長・田村敏雄―大蔵省という組織における敗者三人が、戦後の激動期をへて、「所得倍増」という夢を現実化してゆく…。「文藝春秋」誌上に発表された幻の作品が、加筆されてついに単行本化!!『テロルの決算』と対をなす歴史ノンフィクションの傑作。
目次
ささやかな発端
黄金時代
戦後最大のコピー
第三のブレーン
敗者としての池田勇人
敗者としての田村敏雄
敗者としての下村治
木曜会
総理への道
田文と呉起
邪教から国教へ
勝者たち
やがて幕が下り
世界の静かな中心
著者等紹介
沢木耕太郎[サワキコウタロウ]
1947年、東京都に生まれる。横浜国立大学卒業。79年、『テロルの決算』で大宅壮一ノンフィクション賞、82年、『一瞬の夏』で新田次郎文学賞、85年、『バーボン・ストリート』で講談社エッセイ賞、93年、『深夜特急』でJTB紀行文学大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kawa
31
沢木氏の初期作品。珍し政治・経済モノ、60年代の政治経済を担った池田勇人(総理)、田村敏雄(派閥の事務方)、下村治(経済学者)に焦点をあてたノンフィクションで、雑誌掲載から実に27年経ての単行本化の由。彼らに共通するのは戦前、大蔵省での挫折から蘇り戦後日本の繁栄の礎となった所得倍増政策を推進したこと。世界史的に見ても稀な60~70年の日本の高度成長、所与の環境で当たり前のものとイメージしていたのだけれど、本書を読んで、彼らがいなかったらどうなっていたのだろうかとの思いにとらわれる読み応えある一作。2021/10/20
ア
7
よく知られた所得倍増計画に関わる人々の複層性を描くノンフィクション。めちゃくちゃおもしろかった。 「…田村(敏雄)が激しく希求したのは、国を豊かにするという一事だった。そこに下村治の「いま日本経済は勃興期にある」という激しいメッセージを含んだ「高度成長論」が姿を現わした。やがて、その二人の激しさに、池田(勇人)の奥底に潜む激しさが感応し、ひとつとなることで「所得倍増」は生まれた。だが、もしかしたら…」(終章より)2025/04/01
こばやしこばやし
7
1960年の池田内閣で「所得倍増」がどのように実現されたのか。内閣総理大臣の池田勇人、宏池会の会計責任者田村敏雄、ブレーンの下村治。若かりし頃を大病で苦しみ、大蔵省の傍流ながらも地道に歩みを重ねた三人を丁寧に描いた作品。巻末の主要参考文献からも著者の沢木耕太郎が丁寧に取材を重ねているのが分かる。池田勇人ほど日本人にこれほど分かりやすいゴールを示し、結果も出した政治家はいないのでは無いだろう。池田勇人を首相にさせるための宏池会。素朴ながらも、目的も明らかでエネルギッシュだったことが感じられた。2024/03/09
ごへいもち
6
面白かった2012/07/14
ポン
4
今の岸田首相に繋がるの1960年代の宏池会を知ることができました2024/02/03