四十日

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  • サイズ B6判/ページ数 309p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784309904917
  • NDC分類 933
  • Cコード C0097

内容説明

炎熱と酷寒の荒野に無垢の情熱の行方を追い、イエスと断食者たちの四十日を描いて、生の充実と救済を問う。透明な詩情と超越性の感触。神なき地平の美しい冷然。混沌の現代に静かな福音を告げ、深い感動を呼ぶ奇蹟の名作。1997年度ウィットブレッド文学賞、E.M.フォースター賞を受賞、ブッカー賞最終候補作となる。

著者等紹介

クレイス,ジム[クレイス,ジム][Crace,Jim]
1946年3月、英国ハートフォードシャーに生まれる。ロンドン北部エンフィールドで育つ。大学卒業後、1968、69年、海外協力隊に参加。スーダンの教育テレビで番組制作・出演。ボツワナで教師をする。この時期、非核武装運動および植民地解放運動に参加。1970年帰国し、BBCの教育番組で脚本執筆。1974年、初の短篇“Annie,California Plates”を『ニュー・レビュー』に発表。続く十年間、短篇小説とラジオドラマの脚本を発表。1976年から87年にかけて、フリーランスのジャーナリストとして、『サンデータイムズ』、『サンデー・テレグラフ』他の新聞に寄稿。1986年、長篇第一作Continentを発表。その成功を機に、本格的な作家活動に入る。バーミンガム在住。『死んでいる』(白水社)で全米批評家協会賞、ニューヨーク・タイムズ年間最優秀作品受賞。『四十日』で1997年度ウィットブレッド文学賞、E.M.フォースター賞を受賞。ブッカー賞最終候補作となる

渡辺佐智江[ワタナベサチエ]
翻訳家
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケイ

123
五番目の男にイエスの名前が出たことに驚き、この作品のテーマを知る。あの荒野での悪魔との対決は、常々信者でなくても真実を語っていると読むほどに思っていた。人を試してはいけない、誘惑に負けてはいけない…。そして、ユダヤの教えは常に厳しく、ユダヤ教において救われるものと比べた時に、カトリックの寛容さを感じ、旧約聖書の神の怒りの強さに納得できない思いは常にあった。この作者の描いたキリストも一つのキリスト像でありえると思う。少なくとも彼の行動が他の者に与えた影響は、その人の人生を変えるほどのものだった。2016/08/26

まふ

103
英国の無神論者によるキリストの評伝。キリストの重要な奇跡である四十日間の荒野での断食を「人間の生理面から見れば不可能なフィクション」だと切り捨てるストーリーと言える。が、「神の子イエスは人間と異なるのだからそのような奇跡があり得たのだ」とする反論は当然予想される。ならば、彼はなぜこのような物語を書いたのだろうか。ムーサが商人として商品抜きでの「言葉」の商売を思いついた、すなわち「福音」の商売だ、というところに今日的な「商品戦略」があった…。これぞ作者の最大の皮肉ではなかろうか。G479/1000。2024/04/06

NAO

67
ユダヤ教にのめり込んでいる楽観的で妄想癖のある青年イエスと、荒くれ者のムーサ。イエスはムーサを悪魔の使いと見なして拒絶するが、ムーサのイエスを「癒す者」として売り出そうという目論見は、悪魔というより、キリスト教的で、キリスト教に対する揶揄のようにもみえる。限られた場所と時間の中のムーサの悪魔的な支配力、死んだはずのイエスが見え「イエスによる癒し」で儲けることができるはずというムーサの妄信。ムーサは悪魔なのか、それとも、キリストの別の顔なのか、なんともいえない話だった。2021/07/09

syota

32
イエスが40日間断食して悪魔の誘惑を退けたという「荒野の誘惑」を題材としている。冒頭の「ふつうの男性が完全な断食を行った場合、30日以上生存することはありえない(一部略)」という文章が、無神論者としての著者の立場を明確に表している。奇跡や神がかりを排し現実的思考に徹した結果、聖書とはかけ離れた生身の人間ドラマが誕生した。ここでのイエスが信仰にのめり込んで現実を見失ってしまうのに対し、悪魔の役回りを担う強欲な商人が、状況を素早く把握し押しの強さと巧みな弁舌を武器に苦境を乗り越えていくのが印象的だ。2020/06/14

ヘラジカ

30
作家が描くイエスの生涯と聞いて思い浮かんだのは、まさしく解題の通りモーリアックと遠藤周作だ。ただ、同じように人間イエスを描いたものではあるものの、この作品は二人のカソリック作家とはアプローチの仕方が異なっている。無神論者であるクレイスが描くのだから当然と言えば当然だが、こちらには徹底したリアリズムが貫かれているのだ。モーリアックと遠藤がイエスの精神面を集中して描いたのに対し、この作品では肉体面での闘いをより重視して描写しているように見える。キリスト文学ではまずあり得ないイエス伝だからこそ評価されたのだろう2016/01/29

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