出版社内容情報
怖くて美しい!!長らく謎とされてきた「幻の画家」「発禁の画家」橘小夢の画業の全貌をたどる、永久保存版。江戸川乱歩絶賛!
【著者紹介】
橘小夢の孫。会社勤務のかたわら、小夢の絵の研究、発掘、紹介につとめている。橘明(たちばな・ あきら)の名前で人形造形師としても活動中。
内容説明
時間を越えてよみがえる真の美。長らく謎とされてきた「幻の画家」「発禁の画家」橘小夢の画業の全貌をたどる、永久保存版。
目次
テーマ1 伝説
小夢の生涯(明治二〇年代~明治末―幼少期~画学生時代;大正初年代―挿絵画家として出発;大正中期―日本画家として立つ;大正末~昭和初期―挿絵の円熟期;昭和初年代~昭和一〇年代―夜華異相画房にて版画を自費出版;昭和初期~昭和二〇年代―衣裳デザイン;昭和三〇~昭和四〇年代―家族のために描く)
テーマ2 滅び
テーマ3 幽霊
著者等紹介
加藤宏明[カトウヒロアキ]
橘小夢・孫。会社勤務のかたわら、小夢の絵の研究、発掘、紹介につとめている。橘明の名前で人形造形師としても活動中
加藤千鶴[カトウチズル]
橘小夢・孫。幼少時に小夢と同居。大学勤務のかたわら、祖父である小夢について展覧会開催・書籍作成等全般に携わる
中村圭子[ナカムラケイコ]
弥生美術館学芸員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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ヒロミ
47
小さいサイズながら読み応えありました。まぼろしの幻想画家・橘小夢(さゆめ。サムじゃないのよ)。伝承文学から着想を得た絵画や挿絵が多く、妖しくも怖く、美しい。顔を覆った指の隙間から見ずにはいられない圧倒的魅力。ビアズレーから影響を受けたと思しき白黒絵に感銘を受けた。しかしビアズレーは夭折した画家なのに大正〜昭和初期の日本画壇に与えた影響は絶大だなあ。小夢の描く美人画は関わったら絶対無傷では済まないであろうただならなさが魅力だ。自分がもし男だったらこんな女性に騙されズタボロにされて地獄を見てみたいものだ。2016/02/01
yn1951jp
42
小夢は自らの版画を「優奇世絵」と呼んだ。昭和10年(1935)の台湾での展示では、「凄艶」として肉筆画『あらし』が展示撤回されたという。小夢の絵には緊縛画に通じる凄惨な妖艶美が感じられる。「静かに目を瞑って、闇に咲く花を見つめるような心持で、自分の画を思う時程、私の幸福な時はない。…荒んだ淋しい世間を離れて、諸国の伝説や物の本の種々相を見出し、一人幻を描く時、私の魂はよみがえる」(小夢)「小夢さんは世の常ならぬ美しい夢を抱いているのです」(江戸川乱歩)2015/06/17
きょちょ
28
この人の画、とっても素敵。 描けば描くほど(後期になればなるほど)、美人になってくる。 代表作の、「花魁」や「水魔」も良いけれど、私が最も好きな画は、「ガラシャ昇天」。 今まで、細川ガラシャを書いた本や画を、読んだことも観たこともあるけれど、こんな素敵なガラシャは初めて。 「妖艶」なのは当たり前。 ガラシャさん、なんでこの宗教を認めたの?と聴きたいし、それよりもなによりもこの画のガラシャ夫人にとても会いたい。 でも、「あんたなんか興味ないわ」と言われると辛いなぁ。間違いなく言われそうだし(泣)。★★★★ 2017/11/11
アイアイ
23
妖美で病的な陰りを漂わせた美女が立ち並ぶ作品は、大正12年関東大震災の焼失で無くなり、身を削って書いた作品は軍事国家の日本で受け入れられなく発禁になる。産まれながら心臓疾患、いくつもの不運な逆境を超え生涯筆を握り続ける。息子や嫁が語る父親としての小夢は子煩悩で温厚な人物で、研ぎ澄まされた鋭さ、美しくも怖い絵からは想像のできないギャップです。線の一本もムダなく美しい。心理描写を背景や着物に暗示させる画法、ねっとりまとわりつく濃厚な雰囲気に興奮し鳥肌が立つ。▷図書館2015/11/02
安南
23
焦点の定まらぬ狂気を孕んだ目線の凄味。うっすら覗く糸切り歯の淫靡さ。技巧的に上手い画家とは思わないが、このエロティシズムは誰にも描けない種類のものだと改めて思う。『田之助』『水魔』『嫉妬』『刺青』などは以前から知っていたし、やはり傑作だと思うが、今回は墨一色の連作『牡丹灯籠』に魅せられた。描き込み過多、こってりが持ち味だと思っていたがスッキリとした江戸前の作品も素晴らしい。2015/03/28