出版社内容情報
槿/眉雨 解説=保坂和志
ブロッホ、ムジールなどの翻訳を経て、作家に。『杳子』で芥川賞を受賞。『栖』で日本文学大賞を、『槿』で谷崎潤一郎賞を、『中山坂』で川端康成賞を受賞。『仮往生伝試文』で読売文学賞を受賞。
内容説明
著者自身が厳選した待望の著作集。谷崎潤一郎賞受賞の長篇「槿」および川端康成文学賞受賞の「中山坂」を収録した「眉雨」を一巻にまとめる。八〇年代の逸脱と不安の裡で進行していた危機をエロスと幻影と謎を柱に実験的な長篇に仕立てた著者最大の問題作。そして巧緻な文体の限りを尽くした緊密な短篇集成。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
くさてる
6
以前、アンソロジーに収録されていた「眉雨」を読んで打ちのめされてから私の古井由吉は始まったのでした。昭和の男性作家が女性や狂気という題材を扱うときにはどうしても時代性を感じる差別的な感覚が見え隠れするものだけど、古井由吉にはそれが無い。そんな冷静さを保ちつつ、物語的にはどんどん揺れて迷って混迷としていく雰囲気を表現できる表現力が本当に素晴らしいし、希有なものだと思うのです。読み応え有りました。2014/06/12
山がち
1
山躁賦から槿への流れは、ある種の揺り戻しのように感じられた。また、解き明かしめいたものが書かれているというのは珍しいように感じれた。これらも、反復の流れの中にあるのだろうか。しかしながら、この作品集を通して少しずつ焦点を結ばなくなっていくようなあの感覚は、やっぱり続いている。人物も視界も何もかも焦点を結ばない。そのせいか、解き明かしになったところも結局分からずじまいで、ただ文章に引き込まれながら読み続けるほかなかった。解説は保坂和志さんということで非常に楽しみにしていたが期待通りなかなか面白いものだった。2013/02/15
tamioar
0
端正。2020/03/24